アダルトチルドレンの特徴と6つの役割

アダルトチルドレンとは何か、代表的な特徴と6つの役割についてお伝えしています。

アダルトチルドレンとは?

アダルトチルドレンは、過保護や育児放棄、家庭内暴力(DV)、条件付の愛、過剰な期待、子供依存など問題のある家庭環境で育ち、成長してもなお心に問題を抱え続ける人たちです。

Adult Children」の頭文字を取ってACとも言われます。

もともとはアルコール依存症の親がいる家庭で育った大人たちを指す言葉でしたが、現在はコミュニケーションが上手く機能しない家庭(機能不全家族)で育った人が含まれています。

AC特性は,アルコール依存症の家族の中で子供時代を送った大人たちを指していた.現在では,「お金・仕事・学歴だけが重視される家族」「他人の目だけを気にする表面だけ良い家族」「親が病気がち・留守がちな家族」「両親の仲が悪いけんかの絶えない家族」「嫁姑の仲が悪い家族」等の「機能不全家族」を含めている

引用元:アダルト・チルドレン特性と対人関係でのストレスの自覚の程度との関係、2005、川崎医療福祉学会誌

アダルトチルドレンの診断

アダルトチルドレンは病名ではないため、病院で検査を受けて診断を下されるものではありません。

インターネットや本の情報をもとに自分がアダルトチルドレンに該当すると思えばアダルトチルドレンになります。

本人がどう捉えるか次第なので親が愛情を注いできたと思っているかどうかは関係ないのです。

日本では良好なコミュニケーションが取れている家庭が少ないため、「自分はアダルトチルドレンではないか」と思う人が多いと言われています。

アダルトチルドレンに見られる特徴

孤独感が強く自分に価値を見出せない

アダルトチルドレンは、孤独感が強く「自分なんていなくてもいいのでは」と思いやすいところがあります。

愛された実感が薄いから自分で自分に価値を見出せません。

だから、価値を見出すために常に周りの期待に応えようと頑張り続ける。

自己肯定感が非常に低い状態になっているのです。

人とのかかわりで抱える不安はもちろん、1人で部屋にいるときでも不安が消えず何もせずいられない。

常に義務感に縛られて孤独感を紛らわせている側面があります。

自分が悪いとしか思えず相手を責められない

アダルトチルドレンは相手を責めることができません。

親子関係で直接もしくは間接的に自分を否定され続けてきたことで「親に怒られるのは自分が悪い子だからだ」という認知の歪みが形成。

恥辱感や低い自尊心は,親,親代行者,教師,牧師などの権威者から「恥を知れ!」「本当に悪い子!」「おまえは駄目だ!」といった否定的なメッセージや確信,信念,規則などを何度も耳にして育つことで作られる

引用元:アダルト・チルドレン特性と対人関係でのストレスの自覚の程度との関係、2005、川崎医療福祉学会誌

上手くいかないことがあった場合だけでなく、近くに機嫌が悪い人がいれば自分のせいだと思います。

自分がすべて悪いから相手を責めることができず怒れない。というより、怒りが湧かない人が多いですね。

自分が相手を好きか嫌いか、快不快がわからないので、他人に対する嫌悪や怒りが感じられなくなっています。

依存せずにいられない共依存

アダルトチルドレンは機能不全家族で育ったことにより、自分に軸がなく自己肯定感が低い。

だから、依存せずに自分を保つことができません。

家族間で依存しあって生きてきたアダルトチルドレンは、家族以外の人間関係も依存することで成り立たせてしまうのです。

アダルト・チルドレンは人間関係において「共依存」と呼ばれる歪んだ関係に陥りやすいが,これは他者を幻想的に支配しようとする一方で,他者から必要とされる自分であろうと必死に努力する心理的特徴に由来する.

引用元:大学生の精神保健に関する研究 : 機能不全家族とアダルト・チルドレン、1998、川崎医療福祉学会誌

何かを決めるときにはいつも誰かに決めてもらう。

自分で決められない、決められないから自信が持てないという悪循環も生まれます。

自分と向き合えないから自分がわからない

アダルトチルドレンは自分を見失っています。

嫌で仕方がないDVをする父親を「自分のためを思ってのしつけなんだ」と思い込んだり、アルコールに依存しているのに「これくらいは依存じゃない」と思い込んだり。

現実が辛くて仕方なくてどうしようもないとき、人はその出来事を無理やり正当化して見ないようにします。

人間はそうすることで辛い気持ちから逃れ自分の心を守っている。

これが「否認」と呼ばれるものです。

否認というのは多かれ少なかれ誰にでもあって当然なのですが、本来認めないといけないはずのことを否認し続けて行きていくとどこかでひずみが出てきます。

「自分の感情がわからない」「相手を怒らせてしまうのに原因がわからない」「疲れが溜まって限界に達しているのに気付けない」といったことが起こるのです。

アダルトチルドレンが完璧主義や環境への過剰適応になりやすいのは、自分の気持ちを否認しているから。

依存症は「否認の病」と呼ばれるほどなので言うまでもありませんが、アダルトチルドレンにおいても否認は問題となっています。

表面的な人間関係しか築けず問題を起こす

アダルトチルドレンは人との関係で自分を表現できないから関係が表面的になります。

家族間、友達間、夫婦間でも表面上は上手くいっているように見せかけることができても常に気が休まらない。

表面的な関係なのに見捨てられないかが不安で相手を試したり、関係性以上のものを求めたりでギクシャク。

自分の問題と向き合えないから、自覚できないところで相手を傷つけてしまうこともあります。

相手の反応が怖くて言いたいことが言えず、期待に応えようと無理をしてしまう。

本当は我慢していることでいっぱいなのに自覚できずに抱え込む。

いずれ抱えきれなくなって急に自分から離れる、もしくは問題を起こすことによって、人間関係を破綻させてしまうケースは多いです。

アダルトチルドレンが家族の中で果たす役割

アダルトチルドレンには、問題のある家庭環境を支え、自分自身が生き延びるためにそれぞれ担ってきた役割があります。

様々な類型があると言われていますが、代表的な6つを紹介します。

ヒーロー(英雄)

家族の期待を一身に背負い、生真面目に頑張る努力家タイプ。

完璧主義で異常なほど自分に厳しく、0か100かの極端な考え方をする。

正義感が強く正しいか間違っているかにこだわる傾向があり、正義を貫くため、悪を裁くためであればものすごい行動力を発揮することも。

無価値感が強いがために休めず、頑張りすぎてオーバーヒートしやすいのも特徴です。

スケープゴート(いけにえ)

暴行や万引き、薬物など反社会的な問題行動を起こして問題から注意をそらせようとするタイプ。

注目を集めるために自傷行為をおこなうこともある。

誰も自分のことをわかってくれない、居場所がないという絶望感を抱えています。

家族に「この子さえいなければ」という一種の希望を抱かせることによって家庭崩壊を防ぐ役割を果たすのです。

ロスト・ワン(いない子)

存在すら感じさせないほど手のかからない良い子。

無口で自分を出さないようにして、問題を起こさないために細心の注意を払っている。

目立たないことによって自分が傷付かないようにしています。

学校でも存在感が薄く、なるべく人とかかわらないよう殻に閉じこもる。

人と関係を深めていくことができないので孤独感を常に抱えて苦しんでいます。

プラケーター(慰め役)

親の愚痴を延々と聞き続けて慰めるタイプ。

自己犠牲をいとわないのは自分の感情を押し殺してマヒしているからです。

嫌なことを嫌と言えない、怒りを感じない。

蓄積された感情が爆発して人間関係で問題を起こしてしまうケースが多く見られます。

クラン(道化師)

わざとふざけて不安や恐怖をごまかすタイプ。

表面上はおどけているが、争いごとが起こるのを過度に恐れている。

気まずい雰囲気になると急に笑わせようとふざけたり、変なことを言って場の空気を変えています。

周りには好かれることが多く、親族や友達、学校や職場からの評判もいい。

しかし、常に空気を読んでいるがために気が休まらず人と会った後はどっと疲れる。

ご機嫌取り、相手の期待に応えようとする意識が強く、自分の意見を言わず抱え込む傾向が見られます。

イネイブラー(支え役)

子供らしさがなく大人びた責任感が強いタイプ。

困っている人を放っておけず面倒見が良い反面、依存されることに自分の価値を見いだしています。

共依存関係を形成しやすいがため、人とかかわるごとに頼られてどんどんしんどくなっていく。

大人になって実家を離れても親の面倒を見続けたり、真夜中でも友達の相談を何時間も聞き続けたり、トラブルの仲裁役を買って出たり…

一般的な感覚なら「そこまでしなくても」と思うところまでやってあげないと自分に価値を見いだせないのです。

アダルトチルドレンの役割を手放す

アダルトチルドレンの6つの役割は、形は違えど家族を成り立たせるため、そして、自分が生き延びるために必要なものだったと言えます。

しかし、家族から離れて新たな人との関係を築いていく上ではもう必要ないのです。

役割を果たし続けることでしんどさを抱え込み、家族は成長できないままになってしまう。

実際に結婚して別々で暮らしているにもかかわらず、買い物、機種変更、年賀状の印刷等、何かあるたびに呼び出されて対応したり、頻繁にお金の無心を迫られたり、毎日のように愚痴聞きをさせられたりが当たり前になっていることが珍しくありませんからね。

自分だけでなく家族のためにもアダルトチルドレンの役割を手放すことは必要なのです。

自分がアダルトチルドレンの役割を果たさなくても家族が成り立つこと、今の人間関係において必要性がないことを実感したとき初めて役割を手放すことができます。

人とのかかわりで自動的にアダルトチルドレンの役割を果たそうとしてしまう。手放したいのに手放せないとお困りでしたらご相談ください。