HSPとは何か、特徴や似通った症状、生きづらさを解消するポイント、カウンセリングについてお伝えしております。
HSP(ハイリーセンシティブパーソン)について
HSPとは?
HSP(Highly Sensitive Person)は、ひといちばい敏感な人。
エレイン・N・アーロン博士が提唱した「敏感である」という生まれ持った気質を表す言葉です。
子供に対しては「Highly Sensitive Child」の略であるHSCが使われます。
数年前から書店でも見かけるようになり、最近はインターネット、SNSでも話題になることが増えてきました。
HSPは繊細で周りに気を遣うため、HSPに該当すると知ってもアピールしたり、配慮を求めたりせず、隠そうとする傾向が見られます。
発達障害のような病名ではなく性質を表す言葉なので、正式に診断を受けて薬を飲んだりするものではありません。
HSPは内向型、外向型、刺激追求(HSS)型、刺激追求・外向型の4つに分類されます。
HSPは内向、外向、刺激追求で4つにタイプ分けされています。
HSPの生きづらさ
「5人に1人はHSPに該当する」と聞けば多いように感じますが、逆に言えば5人中4人は該当しないことになります。
つまり、80%の人たちはHSPの感覚が理解できないわけです。
HSPは自分のことを理解してもらえない環境で、本当の自分を隠しながら生きています。
周りに合わせることで無理をして、HSPではない人と比べては自己嫌悪に陥って苦しむ。「打たれ弱い」「気にしすぎ」といった言葉に傷付いてきた人は少なくありません。
HSPではない人たち(非HSP)を中心に社会が構成されている以上、意図せず傷つけられたり傷ついたりすることがどうしても出てきやすい。
非HSPを基準とした「普通」と違う自分を親や他人が認めてくれず、自分でも認めることができないことで自己肯定感が低くなっています。
自分は自分でいいと思えないまま、常に無理をして周りに合わせ続けないといけないつらさを抱えているのです。
HSPかどうかをチェックする
実際にチェックしてみたいという方は、HSPという言葉を考案したエレイン・N・アーロン博士の日本語版サイトにあるセルフテストをやってみてください。
該当する数が少なくても度合いが非常に強ければHSPの可能性があるということなので当てはまる人は多いかもしれませんね。
カウンセリングの中で私が感じてきたHSPの特徴は以下の通りです。
- 純粋でフワッとした雰囲気(天然、やさしそう、弱そう、真面目)
- 自然や美しいものを好む
- 自分の心が痛むから人を傷つけられず抱え込む
- 相手がどう思うかを気にしすぎて言いたいことが言えなくなる
- 自分の行動や判断が大丈夫かどうか常に心配している
- 偏見を持たずに人と接することができる
- 感情的な人や口調がキツイ人は苦手、怖い
- 繊細で些細なことにも傷付きやすい
- その場では相手の意見を真に受けて後から深い洞察に入る
- 疲れやすい
- 言葉だけでなく感覚的なところで通じ合える
- 家庭環境に問題があるとダイレクトに影響を受け、家庭を成り立たせるため自分を犠牲にしてしまう
- 明らかに問題がある人にも優しく接することで関係を構築してしまう
- 威圧的な人に支配されやすい傾向があるためモラハラやパワハラのターゲットになりやすい
- 悲しいニュースに感情が大きく揺さぶられてしまう
HSPに見られる4つの特徴
HSPの属性は「D」「O」「E」「S」の頭文字で表される4つの性質をすべて持っているかどうかで判断されます。
深い情報処理能力(Depth of processing)
HSPは物事を深く掘り下げて本質まで見極めることができます。
相手が自覚できないレベルのことまで気づいてしまうため、相手からすれば的外れに思えることや場の空気を読めていない発言になることもしばしば。
あくまでも自然と気づいてしまうのであって裏を読もうとして考えるのではありません。
ただ、感情に左右されやすいので気持ちが乗っているときはものすごく深くなり、逆に乗らないときは全然だったり。一点集中で狭く深くになりやすい傾向も見られます。
言語能力が高いためさりげなく感性豊かな表現ができるのも特徴です。
過剰な刺激の受けやすさ(Overstimulated)
人混みに行くだけで疲れ果ててしまうから、大型連休での旅行は絶対したくない、出かけるにしてもなるべく人が多い時間は避けます。
映画を観に行くとき割引がない日を選ぶというのは共感されやすいですね。
選択肢が多いとその情報量に混乱しやすく優柔不断に見られることも。混乱を避けるためにパターン化させている人も多いです。
アニメやドラマで感動して号泣、些細な言動にもダメージを受けやすくちょっとしたことにも驚きやすい。
限られた時間の中で成果が求められる場面や周りから注目されている場面等では、ひといちばいプレッシャーを感じてしまうため実力が発揮できなくなります。
感情反応が強く共感性が高度(Emotional reactivity and high Empathy)
HSPは共感性の高さゆえ、他人の感情の動きも自分のことのように感じるところがあります。
他人が怒られているのに自分が怒られているような感覚になって委縮する。
一緒に過ごす相手の感情が不安定だと自分も不安定になるから安定していてほしい。安定させようと働きかけることもあります。
相手よりも自分が悪いと思うから責められず抱え込んでしまう。
他の人が気付かないところまで感じ取れる分、自分が何とかしないとと思いやすい。
脳内にある神経細胞「ミラーニューロン」の働きが活発だと言われていますが、科学的な根拠は示されていません。
些細な刺激にも反応(Sensitivity to Subtle stimuli)
HSPは味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚(痛覚)、一般的に五感と呼ばれる感覚が鋭い。
小さい頃車の芳香剤で気分が悪くなっていたり、たばこのニオイに過剰反応していたり。香水の匂いがキツイ人がいたら食事ができなくなる人もいます。
ジュエリーショップのように照明が強い場所や大きな音が苦手、服の肌触りが気になって着られない素材があるとか。
直感型なので論理的に考えて答えを出すのではなくひらめきで話すことが多い。「なぜか」と聞かれても「なんとなく」としか答えられないのに当たっているということも結構あります。
ただ、他人の感情に左右されやすいので、相手の感情が不安定すぎたりプレッシャーが大きい場面では直感が働きません。
HSPと間違えられやすい症状
発達障害
発達障害は感覚に鈍感な感覚鈍麻もありますが、過敏になる感覚過敏が多く、HSPの敏感さと似通っています。
HSPの掘り下げて考える特徴と発達障害の強いこだわり、想定外のことに対してHSPは驚き発達障害は混乱する。
それぞれ原因は違っていても表面だけ見れば同じです。
発達障害は空気が読めないと言われますが、幼少期の家庭環境に適応するため複雑なパターンを習得したケースもあるので、表面上はHSPのように振る舞える発達障害の人もいます。
とくにHSPの分類の一つにあるHSS型HSP(刺激追求型)と発達障害のADHDは見分けがつきにくい印象です。
似通った特徴を持つHSPと発達障害。代表的な6つの特徴から違いを説明しています。
愛着障害
幼少期の親子関係で愛着に問題を抱えている人は、他人の些細な言動や態度に過剰反応します。
愛着という安全基地がないことによる傷付きやすさが原因となっていますが、表面的には共感性が高く他人に影響を受けやすいHSPと同じに見えるのです。
他者との境界線が上手く引けないところも共通しているため、間違えられやすい要因になっていると思います。
HSPが少数派であるがゆえ、親が他の子と比較してしまい、ありのままの自分を受け入れてもらえなかったことが愛着の問題につながる。
愛着障害は別の問題ではありますが、HSPと関連のある症状という位置づけです。
幼少期に抱えた愛着の問題はその後の人生に大きな影響を与え続けるものです。 愛着障害の分類、愛着スタイル、克服方法とカウンセリングについてお伝えしています。
HSPの生きづらさを解消していく上で大切なポイント
自分を知る
本当は疲れているのにしんどさを自覚できていない、嫌なことを嫌だと認識できていない…
HSPは世間や他人の基準で生きてきたことで自分がよくわからない状態になっています。強い刺激から自分を守るために感覚を麻痺させてしまっている人も少なくありません。
自分を知ることでしんどさが自覚できて適度に休めるようになる、嫌なことを無理に引き受けなくなって自分を大切にできる。
自分が基準になっていくことで、世間や他人に振り回される状態から抜け出していきます。
今まで否定的に見てきた特性を「HSPだからこうなんだ」と受け止められるようになり、自分を肯定的に見ることもできていきます。
感覚や感情を言語化する
HSPは感性が独特であるがゆえ自分の感覚や感情を理解してもらえない経験を繰り返してきています。
本来であれば小さい頃から親に話したりしながら感覚や感情を言語化していくはずが、HSPはその機会があまり得られないまま成長してきたわけです。
HSPは感じ取ることが人一倍多い分、人一倍感覚や感情が蓄積されやすい。
溜まれば溜まるほどしんどい状態になってしまうので、言語化して吐き出すことが重要となります。
ただ、今まで言語化してこなかった感覚や感情はわからないものが多いため、カウンセラーのサポートを受けながら少しずつ言語化できるようにしていくことが必要です。
感情と上手く付き合う感覚を養う
HSPは感受性が高いことで感情との付き合い方が非常に難しく、重要になります。
HSPでない人たちよりも感情の動きが大きくなりやすいため、好き嫌いやその時の気分にどうしても左右されてしまうからです。
とくに嫌悪や怒り、不安、恐怖等のネガティブな感情が出てきたときは大変ですが、上手く距離を置いたり、ある程度受け流したりして、飲まれないようにしていきます。
出すか抑えるかの二択を繰り返していても感情との付き合い方は身につかないので、カウンセリング等の安心できる場で少しずつ感情を出しながら感覚を養っていくことが必要です。
思考で何とかしようとする人は多いですが、「頭ではわかっているけどできない」状態に陥るだけなので気を付けてください。
安心できる環境の確保
親子関係、友達関係、夫婦関係等で安心できる環境を形成していきます。
HSPは自己肯定感の低さから不安を感じやすい傾向が見られるため、安心できる環境があるかどうかは気持ちの安定において大切なのです。
1人の時間が必要になることから、1人でリラックスできる環境と一緒にいて安心できる環境、両方の確保を目指します。
家族や友達に少しずつ頼っていくことで、頼っても大丈夫なんだという経験を積むことが必要です。
現時点で安心できる環境がない場合は、カウンセリングの場が最初の安心できる環境となり、そこから広がっていく形になります。
苦手な人とのかかわり
社会の一員として生活していく以上、自分と気が合う人とだけかかわることはできないため、苦手な人とのかかわりを避けることはできません。
しかし、HSPは直感的に嫌だと感じた相手は無理になってしまうので、関係がギクシャクして問題が起こりやすい。
苦手な人と仲良くなる必要はありませんが、関係性に支障が出ない距離感でのかかわりを持てるようにしていくことは必要です。
HSPの深い洞察によって相手の態度をネガティブに受け取り、嫌な気持ちを増幅させてしまう傾向があるため、カウンセリングで客観的に見る力を養っていきます。
「好きだからかかわる、苦手だからかかわらない」という二択に「苦手でもある程度はかかわりを持つ」を追加するイメージです。
HSPで生きづらさを抱える方へのカウンセリング
HSPの性質を持つカウンセラーが担当
カウンセリングを担当させていただく公認心理師の西橋康介です。
私自身もHSPの性質を持っており、苦労してきたところが多々あります。もっと鈍感で図太い人になれたらいいなと思うことはよくありました。
繊細さを完全になくすことはできませんが、些細なことにでも敏感に反応して傷付き、疲れ果てる状態は改善していくことができます。
HSPの性質をもとに生きづらさを解消できる考え方や人とのかかわり方を少しずつ見つけていきましょう。
カウンセリングによる変化
カウンセリングを受けることで以下のような変化が生まれ、HSPの生きづらさが解消されていきます。
- HSPの特性を知ることで自己理解が深まる
- 適度に休めるようになって頑張りすぎることがなくなる
- 感情や本音を言語化しやすくなる
- 自分を大切にする感覚が養われる
- 安心感が得られて感情をコントロールしやすくなる
- HSPの自分を基準にして自分を評価できるようになる
- HSPではない多数派を自認している人たちとの違いがわかる
- 自分に合ったリラックス方法が身につく
- 生活習慣が見直されて感覚過敏が緩和する
- 自分は自分、他人は他人と切り離せるようになる
- 自分らしく他人と関係を築いていく方法がわかる
- 学校や職場で過度に自分を抑圧せず適応できる
HSPに該当する人ほど「自分はHSPだと思っていいのか」と考えやすいところはありますが、生きづらさを感じておられるのであれば一度ご相談ください。
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