先のことばかり考えて目の前のことが手につかない。予期不安に悩まされている人は少なくありません。
予期不安とは何なのか、どうすれば予期不安を克服できるのかについてお伝えしていきます。
予期不安とは?
突然、動悸や息苦しさ、めまい等(パニック発作)に襲われ、また同じ発作が起こったらどうしようと不安になるのが代表的な予期不安です。
パニック障害特有のものと思われがちですが、以下のような不安も該当します。
「試験に合格できなかったらどうしよう」
「誰とも仲良くなれなかったらどうしよう」
「就職できなかったらどうしよう」
「取引先の人を怒らせてしまったらどうしよう」
「ガンになったらどうしよう」
予期不安はまだ起こっていない未来の出来事に対して抱える不安全般を表す言葉だと言えます。
予期不安が引き起こされる原理
基本的には一度つらい経験をしたことがキッカケで、また同じことが起こったらどうしようと思うことから生じます。
パニック発作のように「死んでしまうのでは」と思うほどの体験であれば、もう絶対にしたくないと思うのは当然ですからね。
大病のように自分が経験していなくても身近な人がなったり、情報を得たりすることによって予期不安が引き起こされるケースもあります。
「もしかしたら…」とネガティブに考えれば考えるほど予期不安は膨らんでいくのです。
予期不安の苦しみ
現実にはまだ起こっていないことを不安に思い、常に不安に支配された状態になっています。
頭では大丈夫だろうと思っても不安が拭えないから安心できない。
不安によって行動が制限され、自分のやりたいことができなくなる苦しみもあります。
予期不安が高まると息苦しさや動悸、吐き気、下痢、睡眠障害などが起こりやすいため、精神面だけでなく身体面でも苦しむことになるのです。
起こってもいないことを心配する予期不安は必要
予期不安を客観的に考えてみると「なぜ起こってもいないことをそこまで心配するのか?」という疑問を抱きます。
実際にやってみないとわからないことだし、そのときになればわかることだから考える必要がないのかもしれません。
しかし、人は誰しも少なからず予期不安を抱えているものです。
小学校から中学校にあがるときに友達できるかどうか、テストで合格点が取れるかどうか、初めて任された仕事を上手くこなせるかどうか…
人それぞれどういう場面で何に対して不安を感じるかは異なりますが、予期不安を一度も感じることなく生きてきた人はいないでしょう。
不安を感じるからこそ頑張ったり準備をしたりすることを考えれば予期不安も多少は必要だと言えます。
予期不安にとらわれ日常生活に支障をきたすほどの度合いになっていることが問題なのです。
予期不安にとらわれてしまう状態を改善する方法
大丈夫な可能性に目を向ける
予期不安はネガティブな結果を想定することで生み出されています。
しかし、実際にはネガティブな結果にならず、無事に終わるケースがほとんどです。
今不安に思っていることが無事に終わる可能性を考えてみるようにしましょう。
そして、大丈夫だった場合のイメージを具体化し、そのときの感覚まで感じ取れたら効果が出てきます。
放っておいても浮かんでくるネガティブな考えを持ちつつ、もう一つの側面として考えるようにしてください。
最初はネガティブな結果しか浮かんでこないと思いますが、継続していくうちに大丈夫な結果が浮かびやすくなっていきます。
「今」に焦点を当てる
予期不安はこれから先の未来に目が向くことで生じるもの。
今現在にあまり目を向けることができていない状態でもあります。
マインドフルネスによって今この瞬間の感覚に目を向けることは予期不安の改善に有効です。
予期不安が出てきたときに呼吸法で息を吸うもしくは吐く感覚に目を向けること。
また、普段の生活においても五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)に焦点を当てて感じる機会を増やすようにしてみてください。
「今」に焦点が当たれば当たるほど予期不安は緩和していきます。
徹底的に対策を考える
予期不安は「ああなったらどうしよう、こうなったらどうしよう」と起こってもいないことに不安を抱くものです。
だから、以下のように「ああなったらこうする、こうなったらこうする」と不安が現実になったときの対策を考えておくと収まりやすくなります。
- パニック発作が起こったら頓服薬を飲む
- 電車で発作が起こったらすぐ降りることができるように各駅停車に乗る
- スピーチで頭が真っ白になったら事前に用意しておいたメモを読む
- がんになったら最先端の治療が受けられるよう保険に入っておく
- 職場で全員に嫌われてしまったら会社を辞める
頭の中だけで考えていると不安に飲まれやすいので、なるべく紙に書くようにしてみてください。
カウンセリングを受ける
予期不安の克服は感情のコントロール感覚と安心感、客観視する力を養うことによって可能となります。
カウンセリングで自分の感情を言葉にしていく中でコントロール感覚が養われ、何を話しても受け入れてもらえる経験で安心感が生まれてくる。
自分が何に対してどういう不安を抱いているのか、どういう原理で予期不安が出てくるのか等を理解することも並行しておこなうため、自分を客観視して不安と距離を置くことができていきます。
そして、日常生活で予期不安が出てきても大丈夫と思えた経験が重なるにつれ、予期不安の度合いが治まって悩み苦しむことはなくなっていくのです。
とくに予期不安で身体面での異常が出ている場合はできるだけ早くご相談いただければと思います。