日々の生活が充実していて幸せな人は、たとえ変だったとしても「普通になりたい」とは思いません。
何かしら現状が上手くいっておらず、悩みを抱えているから普通になりたいと思うのです。
「普通になりたい」の背景にある心理
人に受け入れてもらいたい
普通ではないから自分は受け入れてもらえないと思っていたとすれば、「普通になる=受け入れてもらえる」になります。
人に受け入れてもらうために必要だから普通になりたいと思うわけです。
HSPや発達障害等、何かしら特性を持っている人は、周りと違うことで否定的な反応をされてきた経験が多く、普通になりたいと思いやすい傾向が見られます。
安心感を得たい
みんなと違う、普通ではないというのは、「これでいいのか、大丈夫なのか」と思う不安につながります。
普通になることでみんなと同じになれたら不安が解消される。
自分が安心できるようになるため普通になりたいと思うのです。
同調圧力の強い日本社会において普通や平均ほど心強いものはありませんからね。
劣等感を解消したい
自分が普通ではない、変だと思うことは劣等感につながります。
人より劣っていると思うからせめて普通にはなりたい。
普通になることで劣等感を解消したいという思いがあるのです。
実際に学校や職場で日々周りと比べて劣っている事実を突きつけられ、普通になりたいという思いを強めている人は少なくありません。
苦痛から逃れたい
「普通」が基準になっている世の中において、普通ではないことは苦痛につながりやすいところがあります。
学校や職場といった集団生活の環境で普通の基準に合わせて過ごす大変さ。
家族や友人に勇気を出して相談しても感覚を理解してもらえないつらさ。
普通ではないことで抱える苦痛から解放されたいという気持ちが普通になりたいと思わせるのです。
なぜ自分が普通ではないと思うようになったのか?
作り出された「普通」との比較
高校生であれば休み時間は友達と楽しく話して、放課後や休日は恋人と過ごし、体育祭や文化祭といったイベントで盛り上がり、部活を頑張っていて、勉強もある程度はやっている。
30代後半になる頃には正社員で安定した収入がいくらあって、結婚して家を買っていて、子供がいて、ある程度の貯蓄があってというようなモデルがあったりします。
身近にいる幸せそうな人たち、マスコミが公表した平均値、世間一般に言われる年代ごとのイメージ等をもとに「普通」が作り出され、その「普通」と異なる自分を「普通ではない」と判断しているのです。
容姿、収入、仕事、趣味嗜好、食生活、健康、身体機能、運動能力、学力、知識量、交友関係、恋愛、結婚、家庭環境、住環境、所有物、性格的な特徴(生まれ持った性質)、コミュニケーション能力、考え方…
様々な項目においての「普通」があるため、自分が普通か普通ではないかを判断する機会は数多くあります。
周りから「普通ではない」と判断された経験
親から「どうして普通にできないの?」「〇〇ちゃんはできているのにどうしてできないの?」等と言われ続けていれば、自分は「普通ではない」と思うようになります。
また、学校でキモいだの変だの言われ、自分が普通ではないと思うようになるケースもありますよね。
何かしら目立った特徴があって「普通ではない」と言われるだけでなく、実際は普通と呼ばれる範疇なのに「普通ではない」と言われるケースもある。
世間一般で見れば普通であるはずのことが、あるコミュニティにおいては普通ではないと判断されることがあるからです。
例えば、私が以前勤めていた会社では役職者にメールを送る際、宛名に「役職+様」をつけるのが普通でしたが、世間一般では役職だけつけるのが普通と言われます。
家庭、学校、会社、サークル等、それぞれのコミュニティにおける普通から外れた人が「普通ではない」と判断されてしまうことがあるのです。
自分が自分に対して普通ではないと思う
普通ではないと思うことで本当は普通であるはずの感覚的なところまで否定するようになってしまいます。
「自分は普通ではない、おかしい」と思い始めたら止まらなくなるんですよね。
でも、実際は感覚レベルで見れば自分だけ極端に違うというのはほとんどありません。
同じ人間である以上、当然共通するところはあります。
「普通ではない」ところがあったとして、他の部分もすべて「普通ではない」ということにはならないわけです。
普通になりたいと思っている人は、「普通」を理想化し過ぎている傾向が見られますので、以下の内容を読んで「普通」に対する認識を一度見直していただければと思います。
「普通」の感覚
みんな小さなことを気にしている
- 行動が変だと思われていないだろうか
- 見た目が変だと思われていないだろうか
- 何を話したら良いのだろう
- 本当の自分を見せても嫌われないだろうか
- 緊張しているのがバレたらどうしよう
- 変なことを言ってしまったんじゃないか
- 人前でうまく話せないんじゃないか
こういったことは度合いは違えど誰しも多少なり気にしています。
気になったとしても「まあいっか」と途中で考えるのを止めたり、「なんとかなるさ」と開き直ったり、「そんなこと起こりえないや」と思ったりして深く考えないから気にしていないように見えるのです。
誰しも同じようなことは思うけど、人によって気にする度合いが違うだけ。
自分だけが特別なことを思っているわけではないということです。
人の視線が怖いと感じる他者視線恐怖症の改善方法をお伝えしています。
人間だれしも悪を持っている
人間は誰しも心の中に悪を持っています。
正しくあろう、良い人であろうと頑張っても、世間一般では悪とされる以下のようなものは湧き上がってくるのです。
イライラする、人を見下す、非難する、差別する、軽蔑する、嫉妬する、鬱陶しく思う、嫌いになる等。
そして、不満を言う、悪口を言う、馬鹿にする、責める、批判する、嫌がらせをする、八つ当たりをする、無視する、冷たい態度を取る、裏切る、偽る、嘘をつくといった行動を起こすこともあります。
人間である以上、誰もが持っている感覚です。
たぶん、持っていないとすれば仙人か何かではないでしょうか。
基本的にみんな自己中
相手のことを気遣って生きている人が多いように思いますが、人は基本身勝手な生き物です。
結局は自分がかわいいということですね。
自分を犠牲にしてまで他人のために尽くすことはなく、自分の立場が危うくなれば平気で他人を裏切ることだってあります。
Mr.Childrenの「HERO」という曲の歌詞が表している通りです。
例えば誰か一人の命と引き換えに世界を救えるとして
僕は誰かが名乗り出るのを待っているだけの男だ
引用元:Mr.Children「HERO」
現実的に考えなければ理想的なことをいくらでも言えるのかもしれません。
しかし、実際に理想的なことができる人はどれだけいるのでしょうか。
ネガティブな感情が出てくるのは当然
人間は感情の生き物と言われるとおり、物事を自分の感情で判断する傾向が強いです。
私自身も好き嫌いはありますし、やっぱり自分が嬉しい楽しいと感じることがしたいと思います。
逆に面倒くさいことや嫌なことはやりたくありません。
でも、社会で生活していくためには感情のままではいられず、ある程度感情を抑えてコントロールすることが必要になります。
上司から理不尽なことを言われればイライラするし、面倒くさい仕事を頼まれたら嫌だなと思うけど、表面上は嫌な顔せず対応するわけです。
みんな表に出していないだけである程度の不平不満を抱えながら生活をしています。
そういう当たり前の感情はマイナスのものであっても大事にしましょう。
自分が我慢して丸く収まるならいいと思っていませんか?感情の抑圧は自覚がないまま大きな問題を引き起こしています。
他人は意外と平凡
自分一人だけ空回りしてると誰もが器用に生きてる気がする
引用元:鈴木結女「輝きは君の中に」
これはテレビアニメ『NINKU -忍空-』(1995年放送)のオープニングテーマ「輝きは君の中に」の歌詞です。
「隣の芝生は青い」ということわざの通り、上手くいっていないときは周りが上手くいっているように見えて、自分はなんてダメな人間なんだと思ってしまうところがあります。
でも、本当にそうでしょうか?
冷静に見れば何かしらの悩みを抱えながらも日々何気ない生活を送っている人ばかり。
さらにその中には自分以上の悩みに苛まれている人がいるかもしれません。
悩みなく日々が充実していて幸せを感じられている人の方が少ないものです。
何かしらの特性はある
発達障害か、発達障害ではないか、定型発達、非定型発達という分け方はありますが、あくまでも度合いの問題だと言えます。
誰でも大なり小なり特性を持っているものであり、それによる困難がある程度積み重なると「神経発達症(発達障害)」と診断されます。
弁護士は自閉症スペクトラム(旧アスペルガー障害)の人が多いと言われていますし、行動力が高い起業家はADHDの人が多いと言われています。
数年前、何名かの芸能人がHSPであることを公表して話題になった時期がありましたよね。
表面的には普通に見える人が、実は工夫しながら何とか生活している状態なのかもしれません。
誰しも特性を持っていて、その困難さの度合いによって普通か普通でないかが判断されるなら、普通というのはものすごく曖昧なものだと思わないでしょうか。
「普通になりたい」という思いと悩みの解決
よく「普通である必要はない」「自分らしく生きればいい」と言われることがあります。
それで解決するくらいのことなら「普通になりたい」と思ってわざわざインターネットで検索することはないでしょう。
- 人とまともに会話をすることができない
- 仕事で頻繁にミスをしてしまう
- 集中できなくて勉強しても全然頭に入らない
- 些細なことが気になって悩み続けてしまう
- 相手の気持ちを考えることができず嫌われてしまう
こんな状態だったとすれば「自分は自分でいいんだ」と開き直ったところで問題は解決しませんよね。
「普通になりたい」と思う状態は深刻なのです。
普通ではないことで悩んでいる場合、心理的な問題を抱えていたり、自分の性質と上手く付き合えていなかったりする可能性があります。
カウンセリングでは、普通ではない状態にさせている原因と向き合い、改善に導くサポートをおこなっております。
普通になれないことで日々学校や職場で大変な思いをしておられるようでしたらご相談ください。