マスク依存症で悩む女性

2023年3月13日からマスク着用が個人の判断に委ねられるようになり、5月8日には新型コロナウイルスが感染法上の分類で5類へ引き下げとなりました。

国内で初めての感染者が出た2020年1月から3年以上が経ち、ようやく新型コロナウイルスのパンデミックが収束に向かおうとしています。

その中で生まれている問題の一つであるマスク依存症についてお伝えしていきます。

マスク依存症とは?

マスクを外した方が良いと思っているにもかかわらず、心理的な抵抗によって外せない状態が続くのがマスク依存症です。

新型コロナウイルスの感染を恐れて外せない人もいますが、自分の見た目や人とのかかわりに対する不安が主な要因となっています。

正式な診断名ではないので明確な診断基準、定義はありません。

もともとマスク依存症の傾向があり、コロナ禍で問題が表面化しなくなっていた人。

コロナ禍でマスク生活が当たり前になった影響でマスクを外すことに抵抗を感じるようになった人。

前者の方が問題は根深いですが、後者もコロナ禍による社会全体の閉そく感や不安感等で深刻な心の悩みを抱えているケースがあります。

マスク依存症の実態

学校の昼食の時間等、マスクを外す場面では周りにどう見られているのだろうかと常にビクビクしている。

相手の話が耳に入ってこないほど「周りから自分がどう見られているか」に意識が向いてしまう状態になるのです。

食事のときもマスクを外さず、マスクの下から運んで食べる。水分を取る時ですらマスクをしたままという人もいます。

マスクを外す場面をいかに回避できるかを考えているため、回避できない状況になったとき追い込まれてしまう。

マスクを外すことがまるで下着を脱ぐのと同じような感覚になる「顔パンツ」という言葉が出てくるほどの恥ずかしさを感じます。

マスクを外せなくなる心理

期待を裏切ってしまうことへの怖さ

コロナ禍が3年以上続いていたことで、仲良くはしているけどお互いにマスクを外した顔を知らないという特殊な関係があります。

人間の脳は隠れた部分に対して理想的なパーツを想像して当てはめる傾向があるため、マスクを外すことでその理想を崩してしまうことになるわけです。

私たちが研究を経て解釈したのは、隠れたところに対して、私たちは減点法ではなく加点法で評価しているのだろうということでした。隠れていないところの要素から推測して、最適なバランスを当てはめてプラスの評価をしているのだろうということです。

引用元:なぜ私たちはマスク顔の下に「理想の形」を想像するのか 資生堂社員に聞いた、2021、朝日新聞デジタル

素顔を見せてがっかりされるのではないか、その結果、馬鹿にされたりグループから外されたりするのではないかと不安になることでマスクが外せなくなります。

自分の顔に対するコンプレックス

顔にコンプレックスがある人にとって、顔の半分を隠してくれるマスクは貴重です。

人と対面しているときに注目される顔は、本来であれば隠すことができずコンプレックスを気にしながら話さないといけない。

それがマスクによって回避でき、かつ場合によっては逆の良い評価をもらうことすらある。

マスクをしているときに周りから「可愛い」「イケメン」と言われていた人ほど、素顔とのギャップでマスクを外すことに抵抗を感じやすくなります。

マスク生活の前は少し気になるくらいだった顔のパーツが、隠してきたことで「見られたらどう思われるのだろう」という不安を強め、コンプレックスを抱くようになってしまうケースも少なくありません。

対人恐怖症

人とのかかわりに不安や恐怖を感じやすい対人恐怖症の人は、マスクの着用で安心感が得られているので外すことに抵抗を感じます。

マスクを着用すれば,ひとまず不安や緊張している表情を他人に知られずにすんだり,他人との接触を避けたりして,手軽に安心が得られる。対人関係の場で不安を抱きやすい社交不安症に陥っている人を中心に依存している。

引用元:マスク依存、渡辺登、2018年ストレス科学研究

マスクが日々のつらい症状をなくしてくれるのであれば手放せなくなって当然だと言えます。

対人恐怖症の中でも、とくに表情恐怖症醜形恐怖症を抱えている人がマスクに依存しやすいです。

マスク依存症を克服していくために

マスクを外せない自分を受け入れる

まずはマスクを外すことに対して自分が思っていること、感じていることを一度正直に書き出すことから始めましょう。

自分の顔に自信がないから見せたくはない。恥ずかしい。

素顔を知ったら変に思われるかもしれない。場合によっては友達が離れて行ってしまうかもしれない。怖い。

可愛いと思われていたのにがっかりさせてしまうだろう。グループから外されたらどうしよう…

書いた内容を見て「こんな状態でマスクを外そうとしても無理だよね」と思えるようになれば少し気持ちが楽になると思います。

段階的にマスクを外していく

自分の顔や表情に自信がないからと隠せば隠すほど見られることが怖くなり、どうすれば隠せるかばかり考えるようになっていた。

それが今になって急に隠してきたことを見せろと言われて見せることができないのは当然ですよね。

人の心理は現状維持をしようとするため、無理やり変えようとすればその分反発が起こります。

つまり、不安が強いのにマスクを外そうとすれば余計に外せなくなってしまうわけです。

人が少ない場所で短時間だけマスクを外す等、今の状態で抵抗を感じる度合いが低いことから少しずつ取り組んでいってください。

顔以外の要素に目を向ける

自分の顔や表情にコンプレックスがある状態で受け入れるのは非常に難しいです。

ただ、それは顔だけに焦点を当てているからというのもあります。

人の要素は顔だけではなく、体格、性格、感性、学力、体力、運動能力、仕事の能力、コミュニケーション能力、趣味嗜好、特技、経済力等、他にいくらでもありますよね。

顔以外の要素として自分には何があるのかを一度書き出してみてください。

世間一般の基準での優劣、良い悪いで判断せず、一つの要素として挙げていっていただければと思います。

カウンセリングを受ける

カウンセリングで自分の思いや考えを話し、さらけ出すことはマスクで隠す状態と真逆の行動です。

抵抗を感じやすいことではありますが、カウンセラーに対して自分をさらけ出していくことによって、少しずつ学校や職場の人たちに対しても自分が出せるようになっていきます。

心理的に自分を守ってくれるマスクがなくても、人とかかわりを持つことができるようになるのです。

マスクをつけることで安心感が得られ、人とのかかわりが上手くいっている反面、本当の自分がバレたらどうしようという不安は強化されています。

目の前の一時的な安心感ではなく、本当の自分を出して受け入れてもらえる安心感を目指していきましょう。

マスクを外すことができず、つらい思いをしておられるようでしたらご相談ください。

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