大勢の前でスピーチをするような経験は誰もがするものではありませんが、授業での発表、朝のスピーチ、プレゼンテーション等、人前で話す機会は少なからずあります。
普段の会話はとくに問題ないのに、人前で話すとなると急に緊張してくる。
声が震える、手足が震える、顔が赤くなる、変な汗をかく、頭が真っ白になって言葉が出なくなる等、人によって症状は違いますが、困っている人は多いです。
人前に出ても緊張しない方法を応急処置的な対策とあわせてお伝えしていきます。
緊張しやすい人に見られる特徴
自信がない
他人より自分が劣っていると思うことで、みんなと同じレベルにするためには頑張らないとと思いやすい。
また、ネガティブに捉えやすいことで不安を強めてしまうところがあります。
自分の力以上を出そうとすることで無理が生じ、結果として緊張してしまうのです。
自分を良く見せたい気持ちが強い
格好良く見られたい、能力が高い人に見られたい等と思う人も緊張しやすい傾向があります。
理想を高く持つことで本当の自分を否定してしまう状態になり、ダメなところを見せてはいけないという気持ちがプレッシャーになって緊張するのです。
表面的には緊張と無縁に見える人であることは珍しくありません。
過去の失敗経験を引きずっている
小さい頃にみんなの前で発表をしたときに緊張して笑われた経験がある等、自分にとってものすごく恥ずかしい思いをしたという経験は緊張につながります。
「また同じように失敗したらどうしよう」「笑われたらどうしよう」といった考えが頭の中を巡り、強い不安を感じてしまうからです。
そして、実際にまた緊張することで恐怖心が増し、緊張の度合いが高まっていく悪循環に陥ります。
経験が少ない
人は初めて経験することに対して緊張しやすい傾向があります。
いろんなことを経験してきた人は、新しいことに慣れているので初めてのことでも緊張しづらい。
逆に、あまり経験してこなかった人は、新しいことに慣れていないから緊張しやすいのです。
緊張を和らげるために有効な7つの方法
緊張は当然の反応だと理解する
ストレスを感じると脳内でノルアドレナリンという物質が分泌され、自律神経が交感神経優位の状態になります。
結果として、体温、血圧、心拍数が上昇、赤面、震え、発汗、喉の渇き、呼吸の乱れ等が出てくる。
これが緊張と呼ばれるものであり、人間である以上誰にでも起こりうる正常な反応です。
頭が働きづらくなるのは、瞬時に闘うか逃げるかを選択できるようにするため、自分の命を守るための本能的な現象。
緊張の度合いが強すぎると思考停止状態になってしまうから、上手く言葉が出てこなくなったりするんですよね。
適度な緊張はパフォーマンスを高める上で必要でもあります。
緊張感がまったくない職場と適度な緊張感がある職場であれば、後者の方が高いパフォーマンスを発揮できるのです。
緊張のメカニズムを理解することによって、「緊張してはいけない」ではなく「緊張するのは当然だ」「緊張は役立つところもあるんだ」と思えるようになれば緊張は緩和していきます。
目的を意識する
目的を意識することは緊張緩和につながります。
森田療法の目的本位や選択理論心理学の考え方に近いですが、私は多くの場面でこの「目的意識」に救われてきました。
人前でスピーチする場面であれば「何を伝えたいのか?」「何を伝えなければならないのか?」に集中するというように、その行為の目的に集中します。
目的に意識を向けることができればできるほど「失敗したらどうしよう」「上手く喋れなかったらどうしよう」といった不安が薄れ、緊張が緩和していくのです。
誰しも人前で話すときは多少なり緊張しますが、「これだけは絶対に伝えたい」という目的がある人と、ただやれと言われたからやる目的のない人とでは、緊張の度合いが違うのは何となくわかっていただけるのではないでしょうか。
目的なくただやらないといけないからやる状態になっているのであれば、自分なりの目的を探すことから始めてみてください。
一人で考えても見つからない場合は、カウンセリングで目的が見つかるようにサポートいたします。
相手の反応に対する捉え方を変える
緊張しやすい人は物事をネガティブに捉えてしまう傾向が強くあります。
私自身も悩んでいた時期は「自分の話が下手だからわかりづらいのかな」「こいつ大丈夫かと思われているのかな」とかよく思いましたからね。
でも、実態はたまたま反応が薄い人だったとか、真剣に話を聞いてくれているだけだったとかでした。
原因は相手が作り出してるのではなく、自分が勝手に作り出しているに過ぎなかったのです。
朝礼のスピーチで退屈そうに聞いている人は、眠くて頭がぼーっとしているのかもしれませんし、たいして意味をなさない朝礼自体が嫌いなのかもしれません。
面接で険しい顔をしている面接官は、もともと強面なのかもしれませんし、真剣に話を聞こうとしているからこその顔なのかもしれません。
相手の反応をいつものネガティブな捉え方以外、自分以外の原因と結び付けてみると緊張しづらくなります。
捉え方を変えてみても変化がない、何も変わらないという場合はご相談ください。
失敗した場面とその後をイメージしておく
例えば、朝礼で緊張しすぎて言葉が出なくなったとします。
たいていの人は「どうしたんだろう?大丈夫かな?」と思うでしょう。
気遣って何事もなかったかのように振る舞ってくれる人もいれば、意地の悪い人はからかってくるかもしれません。
もし、職場の人たちにそういう対応をされたらどうなるでしょう?
恥ずかしくて逃げだしたい気持ち、気を遣わせていることへの申し訳なさが出てくる。
からかわれたら嫌な気持ちになって怒りが湧いてくるかもしれません。
だからといって、何か日常に大きな変化があるわけでもなく、今まで通りまた時間が過ぎていく。
人間の記憶は長くて1ヶ月、短ければ1週間も持たず消えていくものです。
失敗しても何とかなったというところまで、自分の体の感覚も交えて具体的にイメージできればできるほど緊張から解放されていきます。
自分へのハードルを下げる
人前で話すときに緊張しやすい人は、何事にも全力で頑張る傾向が見られます。
間違えずハキハキとわかりやすく、有益な話をしよう等と自分にプレッシャーをかけることで緊張してしまうのです。
「能ある鷹は爪を隠す」ということわざがあるように、できる人ほどいつも全力ではなく適度に手を抜いています。
余裕がない、いっぱいいっぱいの状態ではどんな人でも充分に能力を発揮できませんからね。
- ミスをしてしまったら絶対にダメなのか?
- わかりづらい説明になったら絶対にダメなのか?
- 有益でない話をしたら絶対にダメなのか?
心の中で自分自身に問いかけてみてください。
たしかに最初から最後まで全く関係のない話をするとか、相手が理解できないことばかり言うとかであれば問題です。
しかし、全体の中の一部に間違いやわかりづらい表現が入っているくらいなら問題にならないのではないでしょうか。
マイペースを保つ
人前で緊張している人は自分のペースが乱れています。
「マイペース」という言葉は、あまり良い意味では使われませんが緊張しないためには大切なのです。
誰かに指示されて急かされながらやると焦りますが、誰にも指示されず自分のペースで取り組めたら落ち着いていられますよね。
話す内容は相手のためであったとしても、ペースまで相手に委ねる必要はありません。
というより、目の前に何人もの人がいる状況であれば一人ずつに合わせることができないので、自分のペースでやるしかないとも言えます。
話すスピードや間の取り方を普段リラックスしている状態になるべく近づけるよう心がけてください。
マイペースを保つことができれば緊張することはほとんどなくなります。
人前で話すとき以外も他人に合わせてばかりの状態であれば、まず普段のコミュニケーションから変えていくことが必要です。
人との関係を深めて本当の意味で仲良くなるためには、人に合わせてばかりのコミュニケーションをやめることが必要です。
事前準備をしておく
人前で緊張しないためにしっかり準備をしておくことは重要です。
まずは話す内容を紙に書く、もしくはスマホのメモに入力するところから。
文章がまとまったら欠かしてはいけないポイントだけを覚え、メモを見ずに話す練習をしてみてください。
最初は上手く話せないと思いますが、繰り返していくうちに話せるようになっていきます。
そして、実際の場面をイメージしながらリアルな感覚をもとにロールプレイをしていきましょう。
朝礼であれば目の前に職場の人たちがいて、あまり関心なさそうに聞いている様子で、自分は緊張して声が震える感じになっていて…といった感じで相手の様子や部屋の空気感、自分の状態等を実感が伴うくらい具体的にイメージします。
緊張せず話せている姿ではなく、緊張しながらも何とか乗り切っている姿を想像するのがポイントです。
上手くいっている理想的な状態をイメージすると、現実とのギャップで余計に緊張しやすくなるのでご注意ください。
緊張をほぐしてくれる応急処置
五感で感じる
五感で感じ取ることが増えれば増えるほど、内向きの意識が外向きになって緊張状態は緩和していきます。
机や椅子に手を当てる、自分の腕や顔、耳、胸、お腹、太もも等、自分の身体に触れる。(触覚)
口元に手の甲を当てて匂いを嗅ぐ、マスクに落ち着く香りをつけておく。(嗅覚)
直前にフリスクをまとめて噛む、味に特徴のあるドリンクを飲む。(味覚)
反応がいい人だけを見る、もしくは、人がいる方向にある物を見る。(視覚)
外で車が走っている音や鳥のさえずりを聞く、室内の空調や人が立てる物音を聞く。(聴覚)
五感を使った方法で効果が出ないほど緊張しているときは、手に輪ゴムをはめておいてパチンとする、片方の足でもう片方の足を踏むといった形で痛覚を活用してください。
深い呼吸をする
緊張すると呼吸が浅くなり肩に力が入ります。
呼吸法によって深い呼吸にしていくことができればリラックス状態となり緊張から抜け出せます。
緊張状態のときに効果が出やすい呼吸法は「逆腹式呼吸」です。
腹式呼吸の逆、息を吸っているときにお腹をへこませ、息を吐いているときにお腹を膨らませる形で呼吸をしてください。
息が吸いやすくなって吐いたときに肩の力が抜ける感覚があれば上手くいっています。
逆腹式呼吸が難しい場合は、5秒間数えながら息を吸って5秒かけて吐き切る腹式呼吸でも大丈夫です。
身体を動かす
肩を上げて力を入れた状態からストンと下ろしたり、両腕を上げて伸びをしたりする。
あまり大きな動作ができないときは、肩甲骨を寄せる動作をしてみてください。
肩が上がってしまうと効果が出づらいため、なるべく肩を下げながら肩甲骨を寄せることを心がけましょう。
また、不自然にならない程度に身体を揺らす、手足を動かすといったことをしながら話すのも効果があります。
緊張状態で固まった身体に動きを出すことでリラックスしやすくなるからです。
緊張する出来事の前に走っておくのも有効ですが、普段から運動していない人がいきなりやると逆効果になるためお勧めはしておりません。