人と会って話した後に自分の発言や態度を思い出しては不安になり、後悔と自己嫌悪の繰り返しで落ち込んでいく。
「あれは言わない方が良かったかも…」
「何か失礼なことをしてしまったんじゃないか…」
「相手に嫌な思いをさせていたらどうしよう…」
まさに一人反省会。
相手に嫌な思いをさせてないか、自分が嫌われてないか、答えが出るはずもないことを考え続けて苦しみます。
悩みだすと何も手につかなくなったり、眠れなくなったりする人も少なくありません。
一人反省会は反芻思考と呼ばれ、うつ病や不安障害、強迫性障害との関連性があると言われています。
反芻思考とは?
反芻思考とは、過去のネガティブな出来事を思い出すことを繰り返し、後悔したり落ち込んだりする思考です。
ぐるぐると同じようなことを考え続けるので「ぐるぐる思考」と呼ばれることもあります。
考えるのをやめたいと思っているのにやめることができない。
やりたいこと、やるべきことに集中できず、何もできないまま考え続けて疲れ果てる。
一人でどんどん悪い方向に考えて、鬱々とした気分を強化させていく。
反芻思考のせいで上手くいかない、やりたいことができないと思うことが増えるため、なくそうとして余計に思考が強化されているケースがほとんどです。
反芻思考には以下のようなことが影響していると言われています。
ネガティブに偏った感情
思考が止まらない状態になっている人は、ポジティブな感情が持続しない傾向が見られます。
好きなものを食べておいしいと感じても一瞬、嬉しいことがあっても次の瞬間には何か考え事をしていたり。
「あー、おいしいな~」「嬉しいな~」「よかったな~」と、じっくり感じて余韻に浸る時間がほとんどないんですよね。
逆にネガティブな感情はやたらと引きずって考え続けます。
嫌だったことを何度も思い出したり、不安な想像を膨らませたり…
感情のバランスが悪い状態になっているから反芻思考が止められないのです。
思い込みが激しくなってしまう原理、影響力の強さ、改善方法についてお伝えしています。
情報過多の社会
1990年代にインターネットが普及するまでは、テレビやラジオ、新聞、本などが主な情報源でした。
知りたい情報があっても調べられないことが多かったのが、今はスマートフォン一つでいくらでも情報を得ることができます。
さらにSNSの普及によってリアルタイムで情報が入ってくるようになりました。
私たちは気付かないうちに膨大な情報をインプットしているのです。
知らなければそもそも考えなかったことを知ったがゆえに考えてしまう。
流れ込んでくる情報への処理が追い付かなくなった結果、反芻思考が起こりやすくなったところがあります。
未解決のまま放置した記憶
何度も同じことを考えてしまうのは、心の中で未解決のまま放置されているからです。
- 思い通りにさせてもらえなかったこと
- やりたいと思っていたのにやらなかったこと
- 言い返したかったのに言い返せず飲み込んだこと
何度も思い出すことで消化しようとしているんですよね。
牛が一度飲み込んだ食べ物を口の中に戻してかみ砕く「反芻(はんすう)」と同じ。
完璧主義な人ほど未解決のことが多くなるため、反芻思考が起こりやすい傾向が見られます。
人と会ったあと反芻思考に陥りやすい人に見られる特徴
他人に気を遣いすぎている
人と会った後の不安が強い人ほど、他人に気を遣いすぎる傾向が見られます。
嫌な思いをさせないように、迷惑をかけないように、つまらないと思わせないように…
「相手にとってどうか」をものすごく意識しているのです。
幼少期から親の顔色をうかがってきた人は、「これを言ったら親はどう思うか」を常に考えてきたことで他人に対しても気を遣いやすいところがあります。
気を遣って相手のことばかり考えているから、あるはずのない正解を求めて反省を繰り返してしまうわけです。
相手を思いやれる人と言えますが、他人との衝突、拒絶を恐れる心理も背景にあり、単純に優しいからと一言で片付けることはできません。
人の顔色を窺ってしまう原因からどうすればやめることができるのかをお伝えしています。
自分を信用できていない
自分が自分を信用できていないことも影響しています。人と会ったあとの不安が強い人ほど自信がない傾向が見られます。
- 親に言われるがまま生きてきた
- 不安なことがあるたび誰かに確認していた
- 周りに合わせて判断を委ねてきた
自分で考えて決断した経験が少ない人ほど、自分を信用したくてもできない。だから、自分の発言や態度が問題なかったと思いたくても思えないのです。
人とのかかわりにおいて正解がない以上、自分を信用できない状態で不安が収まらないのは当然だと言えます。
他人は正しくて自分は間違っている。間違った自分の意見は言う意味がないと、考えることすらなくなってどんどん自信を失ってしまう悪循環もあります。
どうすれば自信が持てるようになるのか?大切な前提から具体的な方法をお伝えしています。
気にしやすい自分の尺度で見ている
自分が些細な言動や態度を気にしているから、相手も気にしていると思ってしまうところがあります。
気にしやすい自分の尺度で相手を見ているのです。
しかし、実際は人によって気にする度合いが違うため、自分と同じように気にする人もいればあまり気にしない人もいる。
大変なことをしたと思って謝ったら、相手は気にしていないどころか覚えてさえいなかったというケースがあるくらい。
当然「自分は自分、他人は他人」と頭ではわかっています。
感覚的に自他の境界線が上手く引けず切り離せていない状態になっているのです。
寝る前に反芻思考が起こりやすいのはなぜ?
無意識にあった思考が表面化する
眠りにつく寸前は変性意識の状態になります。
変性意識は簡単に言うと催眠術にかかった状態なので、無意識にある思考がスッと出てきてしまうんですよね。
人は1日で1.2万~6万回思考をしていると言われており、日中自分が考え事をしていると認識できているのはそのうちのほんの一部でしかありません。
潜在化していた思考が出てくることによって反芻思考が起こりやすくなるわけです。
ただ、思考が表面化したとして、普段からあまり考えないタイプの人は「まあいっか」と流すのでそのまま眠れる。
逆によく考えるタイプの人は気になって考え続けて眠れなくなってしまうのです。
考え事をしやすいのが幼少期からであれば、HSPや発達障害等の生まれ持った性質が影響している可能性が考えられます。
睡眠への意識が強くなりすぎている
寝ないといけないと思えば思うほど眠れなくなるもの。
睡眠というのは人間の三大欲求の一つであり、本能的に求めていることです。
普通に眠れている人たちは「寝なきゃいけない」と義務感で眠っているわけではありませんよね。
「明日7時に起きなきゃいけないから早めに寝よう」とか「夜更かしは身体に良くないから寝よう」とかのレベル。
しかし、考え事で眠れない状態が続くと「また眠れなかったらどうしよう」という予期不安、しんどさも相まって睡眠への意識が過剰になる。
「眠る」ではなく自分を「眠らせる」になって、リラックスできないからあれこれ考えてしまう状態になるのです。
反芻思考で眠れないときの対処法
その時の状態によって眠りやすくなる方法は変わります。一つの方法にこだわらず、自分の状態を見ながら試してみてください。
人は意識することが増えれば増えるほど緊張してしまうため、ちゃんとやろうとせず「ある程度できたらOK」くらいの感覚で取り組むようにしていただくと効果が出やすいです。
リラックス状態を作り出す
思考が止まらず眠れないときは緊張状態になっているため、緊張を解くこと、リラックスすることが必要です。
リラックスする方法には呼吸法や瞑想もありますが、なかなか難しいのでやりやすい方法をお伝えします。
下記の1~4を順番にやってみてください。
- まずおでこに利き手(手のひら)を当てて目を閉じます
- 目を閉じた状態のまま、おでこを見ようとしてください
- 時間の経過と共に身体の力が抜けてリラックス状態になります
- そして、おでこに当てていた手をおろしてください
おでこがスーッとして、風が吹いているかのような涼しさを感じるでしょう。
呼吸が深くなって全身の力が抜け、身体が布団に沈むような感覚になれば成功です。(ただ、成功を求めると意識してしまうので結果的にそうなればいいなくらいで思っておいてください)
また、音楽を聴くこともリラックス状態になりやすいため効果があります。
川のせせらぎ、鳥のさえずり、雨、滝といった自然の音、ピアノやオルゴールの音楽、デルタ波やソルフェジオ周波数のヒーリングミュージック等、YouTubeを利用すればその時の気分に応じて選択できますので一度お試しください。
自律神経が整う状態にしていく
血流が悪くなって体温低下、身体に余計な力が入ることも眠れない原因です。
自律神経の問題なので自分の意思ではコントロールできませんが、以下のように自然な身体の感覚に委ねていくと調整されていきます。
まず布団の上で仰向けになり「気持ちが落ち着いている」と心の中で唱える。
そして、右腕に意識を向けて「右腕が重たい」と心の中で繰り返しながら右腕の重みを感じていく。
同じように「左腕が重たい」「右脚が重たい」「左脚が重たい」と順番に進めてください。
実際の重さを感じるだけなので「重たくなる」ではなく「重たい」と唱えるのがポイントです。
次は「重たい」を「温かい」に変えて、右腕から同じようにやっていきます。
ご紹介したのは自律訓練法の第一、第二公式です。感じることができればできるほど緊張がほぐれ、手足の温度が自然と上がって眠りにつくことができます。
考えていることを書き出す
眠るためには眠ってもいい状態になることが必要です。
安心感や適度な疲労感、体内時計など、一日の過ごし方が影響するところでもあります。
しかし、寝る間際になって一日をやり直すことはできません。今できるのは帳尻合わせです。
頭に浮かんでいることをとにかく書き出していきましょう。
書いていくうちに「考えなくても大丈夫か」「何とかなるかも」と安心できることが出てきたり、言語化しながら手を動かすことで疲労感も蓄積されてきたり。
試験が迫っている等、何か不安なことがある場合は、勉強をしてみたり不安の緩和につながることが有効です。
少しでも眠ってもいい状態に近づけることができれば眠りやすくなります。
眠れないことについて考える
どうせ考えすぎてしまうのだから、逆に考えてみるという方法です。
眠れないことを深刻に捉え、何とかしようとすることで眠れない状態になっているため、眠れないことを楽観視できれば眠りやすくなります。
下記のような感じで「今日眠れないことが大したことではない理由」を考えてみてください。
『今日一日、今眠れないことってどれだけ重要なこと?1ヶ月31日、1年365日、3年とかでみれば大したことなくない?たとえ眠れない日が数年続いたとしても、その後数年以上眠れる日が続けば大丈夫ではないか。
今まで眠れない日が続いてるけど何とかなっている。たしかにしんどいのはしんどいけど、眠れないこと以外では順調なこともある。
明日どうしてもしんどかったら休むことだってできる。無理でも仕事中にうたた寝でもすればいいじゃないか。
今眠れないからといって、これが一生続くとは限らない。絶対眠れるようになると言えないとしても、絶対眠れないままとも言い切れないよね。』
自分なりに腑に落ちる内容が出てきたら力が抜け、自然と眠りにつく状態になっていきます。
人と会ったあと反省会がやめられない反芻思考の改善方法
思考を止めようとしない
反芻思考をやめるためにまずやっていただきたいのは思考を止めようとしないことです。
ぐるぐると考え続けるのはしんどいので、何とか止めようとする気持ちはわかります。
しかし、思考は「止める」のではなく「止まる」ものです。
明日自分の人生を左右する出来事がある状況で、明日のことを考えないようにするのは無理ですよね。
今考えが止まらないのは、考えることが必要な状態になっているからだと言えます。
思考は本来止まるものだという前提のもと「しんどいけど今はどうしても考えてしまうよな」と受け止めることを心がけてください。
不安を受け止められるようにしていく
まずは不安に感じたことを少しずつ言葉にしていくところからです。漠然と頭の中だけでグルグル考えるのではなく、一度紙に書き出してみてください。
自虐ネタを笑いながら話していたから自分も笑ったけど失礼だったかな?プライベートなことを突っ込んで聞きすぎたかな?自分だけ服装がおかしくなかったかな?とか。
不安な気持ちを言語化すれば距離を置くことができ、不安が収まりやすくなります。
それでも収まらない場合は、不安が現実化したら何が困るのかを考え、実行可能な対策を準備するところまでやってみましょう。
ただ、一人で考えていると不安を膨ませてしまいやすいため、身近な人から客観的な意見をもらうことも大切です。
不安が収まってくると客観視しやすい状態になり、「大丈夫だろう」と思えてくる。繰り返していくうちに不安を受け止めやすい状態になっていきます。
視野を広げて全体に目を向ける
0か100か、正しいか間違っているかで考える度合いが強く完璧を求めるがゆえ、あの発言は…あの態度は…と問題のある一部をピックアップして苦しんでいるところがあります。
全体から見れば些細なことなのに、そこに焦点を当てるから何か大きなこと、大変なことに思えてくるわけです。
会話を通して一度や二度は場違いなことを言ったり、間違ったことを言ったりするのは誰にでもあって、今までの生涯で一度も他人に嫌な思いをさせたことがない人なんて存在しません。
たとえ変なことを言ったとしても、他の話に紛れて印象に残っていないかもしれないし、全体的に会話が楽しめたことで帳消しになっているかもしれない。
一部のマイナスだけに焦点を当てるのではなく、そのときの会話全体がどうだったのか、その日までの関係性はどうだったのか、何か自分の存在がプラスになっている面はないか等、他の面にも目を向けてみてください。
自分だけで考えても視野が広がらない、どうしても一部の問題に執着してしまうという場合は、カウンセリングでサポートさせていただきます。
自分の感覚を大切にする
思考に支配されている人は自分の感覚にほとんど意識が向いていません。
日々やるべきことに追われ、自分の感覚を蔑ろにしているのです。
- お腹が空いているのに仕事を優先して食べない
- 身体が疲れているのに休まず家事を頑張る
- 眠いのに無理やり起きて勉強を頑張る
自分の身体や心が発している声に耳を傾けてみましょう。
そして、ほんの少しでもいいので、身体や心の声に従うようにしてみてください。
心地よさを感じるとともに思考が止まりやすくなっていきます。
ポジティブな感情を増やす
一日過ごしてポジティブな感情を一切感じないケースはほとんどありません。
すごく嬉しかったとか楽しかったはないとして、美味しかった、よかった、ちょっと嬉しかったなら一つくらいはあるはず。
振り返って探す習慣をつけていきましょう。
どうしても見つからなければ過去の体験でもかまいません。
思い出しながら当時の感覚を再体験してください。
ポジティブな感情を感じやすくなれば、ネガティブな感情とのバランスが取れて思考が止まりやすくなります。
行動を増やす
やることを増やして考える時間を減らしましょう。
ただ、自分がやりたくないことでは思考が働きやすいので、集中しやすい好きなことや興味関心のあることがいいですね。
絵を描くとか、歌を歌うとか、散歩をするとか、掃除をするとか、料理を作るとか…
同じことの繰り返しになると考えながらできてしまうため、なるべく変化をつけてやっていくようにしてください。
難易度が上がって達成感が得られ、自分がより良くなれることが理想的です。
義務感ではなく「やりたいからやる」という感覚を大切にしていただければと思います。
カウンセリングで目を背けてきた問題と向き合う
カウンセリングを受けながら、未解消のままになっている問題が何かを知っていきます。
親子関係なのか、学生時代の人間関係なのか、職場の人間関係なのか、生まれ持った性質なのか、自分の未来なのか…
どこかに無意識レベルで考えないようにしてきたことがあるのです。
まず現時点で気になっていることから、話せる範囲で少しずつ話していただく。
感情の動き、欲求、感覚、時間(過去、現在、未来)等、複数の視点で対話を重ねていく中で問題を自覚することができていきます。
反芻思考の正体を知り、上手く付き合っていくことができるようになれば思考は止まるのです。
人と会ったあと思考が止まらずしんどい思いをしておられるのであればご相談ください。