不器用で何をするにも人より時間がかかってしまう私は、小さい頃から「どんくさい」「遅い」と言われ続けてきました。

保育園の頃、祖父が迎えにきてくれたとき弟はすぐ出て行くのに、帰り支度に時間がかかる私はなかなか出られない。

小学生のときに付けられたあだ名は「トロ」、理由はみんなよりトロいから。

家庭科の縫い物、美術の作品、音楽のリコーダー…どれも居残りでやっとみんなに追いつくような状態でした。

飲食店のバイトでは要領が悪すぎて年下から邪魔者扱い。

本音と建前の使い分けができず上司と衝突してひどいパワハラを受け続けた経験もあります。

クレジットカードで買い物したときの署名にやたらと時間がかかったり、洗い物をしていたら妻に「ちょっとの洗い物にどんだけ時間かかってるんよ!」とイラつかれたこともありました。(私と正反対で妻はめちゃくちゃ器用です)

不器用でダメ人間。

私は自分のことをこう思っていました。

だから、いつも器用な人に憧れ、不器用な自分を変えよう変えようと必死だったのです。

不器用であるがゆえにどれだけ嫌な思い恥ずかしい思いをしてきたか、何でも当たり前にできる人にはわからないことだと思います。

不器用という性質を否定するからダメ人間になる

人それぞれ生まれ持った性質があります。

見た目も違えば性格も違うのが個性であり、とくに発達障害HSPの人は顕著です。

何でもパパッとこなす器用な人もいれば、私のように時間がかかってしまう不器用な人もいます。

一般的に見れば器用な人の方がいいに決まっているでしょう。

会社でも真面目に黙々と仕事を頑張る人より、上司に上手く取り入って要領よく仕事をこなす人の方が評価されやすいですからね。

「だから不器用な人も器用になりましょう」といって簡単になれるものではありません。

例えば1つずつしか作業をこなせない人が2つ以上の作業を同時に進められるようになるのは至難の業です。

周りからは馬鹿にされたり怒られたり、自分なりには精一杯頑張っているのになかなか評価してもらえない。

そんな状態が続くと自分の全てが否定されたような、まるで自分には生きる価値すらないのかと思うほどになります。

不器用な性質を周りから否定され、自分でも周りと比較して否定する。

「器用になりたいのになれない…不器用な自分は役に立たないダメ人間だ…」という考えになるのも当然でしょう。

不器用は本当にダメなのか?

実は不器用にもいい部分があったりします。

まずは隙があることで相手に安心感を与えられることです。

器用でなんでもソツなくこなして頭も良くて…なんて人とかかわったらプレッシャーを感じますが、不器用で何をやるにも時間がかかるような人なら自分も頑張らなくていいんだと思えます。

不器用ながらも頑張っていることが評価されることもありました。

最初に勤めた運送会社の面接では緊張で顔を真っ赤にして話もグダグダ。雇う側の都合も考えずただ自分を変えるために「営業がやりたい」と主張するような状態で内定をいただくことができたのです。

当時の私は面接で説教をされるほどひどい状態でしたが、それでも頑張りを評価していただいての採用だったと聞いています。

頑張ることによって周りに影響を与えることもありました。

器用な人が何かをこなしたとしても「あの人だからできるんだ」と切り離して考えます。

対して、不器用な人がこなしたら「自分にもできるかも」と思ってもらえたりするものです。

自分と同じ不器用な人の気持ちがわかるというのもあります。

器用にできる人は不器用な人の気持ちがなかなか理解できません。

できるのが当たり前の人には「できない」という概念がなく、「なぜこの人はできないんだろう」としか思えないですからね。

不器用でも適応していくことは必要

「不器用にもいい面があるからそのままでいいんだよ」と言いたいところですがそうはいきません。

期限のある仕事に「不器用だから時間が足りません」では通らないし、不器用だからといって周りの足を引っ張ってばかりでは嫌がられます。

自分はみんなよりも遅い。同じ作業を同じようにやれば2倍以上時間がかかってしまう。

不器用だと認識しているのならその場に適応できるようにしていく必要はあるのです。

  • 教えてもらったことを少しでも早く覚えられるように帰宅してからノートにまとめる
  • 作業時間を確保するために早歩きか走るかで移動時間を短縮
  • 一日にやらないといけない仕事をリスト化して優先順位付け、前倒しできる仕事は必ずやっておく
  • 早めに出勤、残業できるなら残業して周りより使える時間を増やす
  • 必要な書類がすぐ取り出せるようにレイアウトを工夫する
  • 不安や恐怖で頭が真っ白になってしまいそうなときは事前にメモを作成しておく

他にもいろいろありますが、不器用なりに私自身も適応するために試行錯誤してきました。

「よーいドン」で同じところからスタートしないように、一歩でも二歩でも事前準備しておくことを念頭に置いています。

まだまだ足りないところがいっぱいあって、いまだに怒られることもありますけどね(笑)

不器用な自分と上手く付き合っていくために

人はどうしても自分の物差しで測るところがありますから、自分ができることは相手も同じようにできると思って求めがち。

自分が1分でできたら相手も1分くらいでできるだろうと思うわけですが、不器用な人は倍以上かかってしまったり、場合によっては全くできないこともあったりするのです。

だから、相手を怒らせてしまうことや心配させてしまうことは日常茶飯事。

責められることもあれば自分がやった方が早いからと取り上げられてしまうこともあります。

そういう相手の反応で「自分ってこんなこともできないんだ。ダメだな。」と思ってしまうのは当然です。

しかし、そもそもの性能が違うからいきなり変えることはできません。

「みんなと同じようにしないと」と無理をするのではなく、不器用な自分なりのペースで頑張ることが大切だと思うのです。

他人のペースで頑張れば頑張るほど疲れ果てて、逆に何もできなくなっていきますからね。

そして、必要に応じて周りに助けを求めること。

何でもかんでも助けてもらうわけにはいきませんが、自分なりに頑張りながら足りない部分を補ってもらえるようにお願いすることも必要です。

自分だけで上手くこなせない部分があるから助けを求めざるをえないという感じでしょうか。

私自身も多くの方に助けていただいて何とかやってこれていると思っています。

不器用でダサい、上手くやろうとしてもやれないのが自分。別に不器用だからダメということはない。

正直言うと何でも器用にできる人を羨む気持ちはあります。

でも、不器用という性質がなくなったら自分じゃなくなるわけで。

否定されることもバカにされることもありますが、今は自分を構成してくれる大切な要素として認めています。