母親に抱っこされる赤ちゃん

幼少期に抱えた愛着の問題はその後の人生に大きな影響を与え続けるものです。

愛着障害の分類、愛着スタイル、克服方法とカウンセリングについてお伝えしていきます。

愛着障害(アタッチメント障害)とは?

愛着障害とは、母親をはじめとする養育者との間で心理的な結びつき(愛着)が上手く形成されなかったことで、情緒面や対人関係に問題が生じてしまう状態を表す言葉です。

愛着障害は5歳以前に発症するものであるため、大人になってから悩んでいる場合は「大人の愛着障害」と呼ばれます。

  • お腹が空いたら泣いてミルクをもらう
  • おむつが汚れたら泣いて替えてもらう
  • 何か不快な感覚になったら泣いてあやしてもらう

子供は養育者を頼り、それに応えてもらう形で少しずつ愛着を形成していきます。

しかし、虐待等のように養育者に頼っても応えてもらえない環境で育つと愛着が形成されません。

愛着は人を信頼し、安心できる感覚につながるものであるため、愛着障害になると主体性を失い、良好な人間関係を築くことが困難になってしまうのです。

うつ病、解離性障害、境界性パーソナリティー障害等を発症する可能性が高いと言われています。

愛着障害の原因

虐待だけでなく、養育者の無関心、離別、兄弟姉妹間での差別的対応等、愛着障害につながる原因は様々です。

養育者から危害を加えられる、何かしらの事情によって関係を築くことができない、家庭環境が安全ではないといったことがあると愛着の形成が妨げられてしまう。

養育者が子供のためを思い、愛情を注いだつもりが子供にとって苦痛でしかなく、結果として愛着障害を引き起こしてしまう可能性もあります。

例えば、発達障害で触覚防衛がある子供であった場合、スキンシップを大切にしようと養育者が積極的に体に触れる、抱きしめるといった行為をすることは子供にとって苦痛になるわけです。

発達障害やHSP、感覚統合障害等を抱えている子供であれば、その都度都度の様子をしっかり観察しながら愛着を形成するかかわりを重ねていく必要があります。

愛着障害が脳に及ぼす影響

実際に親から虐待を受けた子供の脳がどれだけの影響を受けるかは研究結果で示されています。

言葉による虐待(暴言虐待)…スピーチや言語、コミュニケーションに重要な役割を果たす大脳皮質の側頭葉にある「聴覚野」の一部、上側頭回灰白質の容積が平均14.1パーセント増加。

厳格な体罰(頬への平手打ちやベルト,杖などで尻をたたくなどの行為)…感情や思考をコントロールする前頭前野の一部、右前頭前野内側部の容積が平均19.1パーセント減少。さらに集中力・意思決定・共感などに関わる右前帯状回も16.9パーセント減少。物事を認知する働きをもつ左前頭前野背外側部も14.5パーセント減少。

夫婦間のDVを目撃させる行為…視覚野(ブロードマン18野:舌状回)の容積が平均16パーセント減少。

DV…視覚野の一部で夢や単語の認知に関係する舌状回の容積が身体的DVで3.2パーセント減少。言葉によるDVでは19.8パーセント減少。

引用元:体罰や言葉での虐待が脳の発達に与える影響 – 公益社団法人 日本心理学会

愛着障害は子供の脳を変化させるから情緒面やコミュニケーションの問題を生み出すのです。

愛着障害の分類

反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)

過剰な警戒をすることで人に頼ることができない。甘えたいのに素直に甘えることができない。

自分に愛情を向けてくれる人がいても、怒ったり無関心になったりして上手く受け取ることができません。

養育者との関係で心の交流がなく、人を信用すること自体が非常に難しいのです。

無表情であまり感情表現をせず、他の子供とのかかわりを求めようとしない様子から発達障害(自閉症スペクトラム症)と間違われやすいところがあります。

脱抑制型愛着障害(脱抑制性対人交流障害)

特定の人に愛着を示すことがなく、誰彼問わず愛情を求めます。

初対面の大人に対して多少なり抱くはずの警戒心がないため、自分から積極的にくっつきに行けてしまうのです。

自分に注意を向けてもらうために乱暴な行為や危険な行為に走るリスクがあります。

落ち着きがなく衝動性が高い様子から発達障害(ADHD)と間違われやすいです。

4つの愛着スタイル

愛着スタイルは4つに分類されていますが、100%安定型、100%回避型という人は存在しません。

どのスタイルも持ち合わせていて一番高いものがその人の愛着スタイルとなります。

愛着スタイルを診断してみたい方は以下のサイトをご利用ください。

⇒愛着スタイル診断テスト(Googleで「愛着スタイル 診断」と検索して一番上に出てくるサイトです)

「安定型」以外に該当する人たちは愛着に問題を抱えているため、広義の愛着障害と言われることがあります。

安定型

養育者が安全基地として機能しているため、子供がストレスを感じたときに適度な愛着行動を起こします。

養育者と離れると不安で泣いたりはするものの、養育者が戻ってくれば甘えることができる。

たとえ離れている時間があっても親が必ず戻ってきてくれると信じているため、養育者に守られている安心感があるのです。

心理的な距離感を測り、適切な自己開示ができますので、仕事でもプライベートでも上手く適応できています。

自己肯定感が高く、必要に応じて人に頼ることができることから心理的な問題を抱えづらい。

もっとも多い愛着スタイルで50%以上の人が該当すると言われています。

回避型

安全基地がないのでストレスを感じても愛着行動を起こしません。

養育者と離れても無反応、養育者が戻ってきても甘えに行くことがない。

施設で育った子供や放任(ネグレクト傾向)の親に育てられた子供がなりやすいと言われています。

常に他者との距離感を保ち、親密になることを避けようとする。

人に対して関心を持ちづらく、共感性が低い。自分のことですら他人事のように話す傾向が見られます。

重要な役割を任されたり、求められたりすると重荷になってストレスを抱え込む。

「人に頼っても結局は自分が解決するだけだ」と思っているため、どれだけ大変な状況になっても人に頼ろうとはしません。

比較的男性に多く25~30%の人が該当すると言われています。

不安型

養育者の安全基地としての機能が不十分であるため、愛着行動が過剰に引き起こされます。

養育者から離れることに激しく抵抗するが、養育者が戻ってきても素直に甘えない。くっつくとべったりして離れないところがある。

ヒステリック、過干渉、規範意識が強いといった特徴のある親に育てられた子供が不安型になりやすい傾向が見られます。

相手の顔色をうかがって常に気を遣っている。

人に嫌われること、拒絶されることを恐れているため、相手の反応をネガティブに捉えて悩むことが多いです。

相手に拒絶されるくらいなら自分から離れていこうとしてしまうことも少なくありません。

15~20%の人が該当すると言われています。

恐れ・回避型

回避型と不安型がどちらも強い愛着スタイルです。

養育者がいなくなっても無反応だったり、逆に激しく泣き叫んだり…その時々で変わります。

本来安心して過ごせるはずの安全基地が危険だったことで混乱してしまい、回避、不安とも強くなっている。

虐待をする親、情緒不安定な親で、予測不能であったことが子供を混乱させ無秩序なパターンを生み出しているのです。

親密になりたい気持ちはあるものの、拒絶を恐れるから葛藤が生まれやすい。

解離の傾向も見られるため、急にすべてがどうでもいいかのように思うことがある。

もっとも少ない愛着スタイルで5~10%の人が該当すると言われています。

愛着障害を克服していくために

愛着障害を受け入れる

愛着障害は幼少期に自分が生き残るための手段だったと言えます。

  • 養育者との心理的な距離感を保つことで日常生活を送ることができた
  • 人懐っこく近づいていくことで周りの大人に可愛がってもらえた
  • 情緒が不安定になることで周りが関心を向けてくれた

愛着が形成されなかったことによる傷付きやすさから自分を守るために愛着障害を抱えていたところがあるのです。

愛着障害が自分を守ってくれていた側面にも目を向けてください。

愛着障害を受け入れることは自分を受け入れること、愛することになるため、愛着障害の克服につながります。

安全基地を形成する

過去に戻って養育者に愛情を注いでもらうことはできません。

1歳半までに形成されなかった愛着はそのままになりますが、養育者以外との関係で新たに愛着を形成していくことはできます。

すでに今つながりがある人たちとのかかわりをなるべく避けず、少しずつ自分の思いや考えを話すようにしていきましょう。

職場、家庭、友人知人関係、習い事、サークル等、コミュニティに自分の居場所があると思える安心感が出てきます。

心の安全基地が形成されることによって愛着障害は克服へと向かうのです。

ただ、養育者以外の人の場合、一方的に受け入れてもらうだけ、助けてもらうだけでは関係が成り立ちにくいところがあります。

安全基地としてのカウンセリング

カウンセリングでは、自分の思ったことや考えたことを自由に話し、聴いてもらうことができるため、養育者と同じく一方的に受け入れてもらうことができます。

まずカウンセリングを最初の安全基地として確保し、そこから他のコミュニティに広げていく。

安全基地が一つあるだけで今までの強い不安感、傷付きやすさが緩和するため、人との関係を深めやすい状態になります。

今まで愛着障害を克服できた方々も同じ流れでした。

ただ、愛着障害の人にとって自分をさらけ出し、受け入れてもらおうとするのは非常に難しいことです。

「このカウンセラーになら話せるかも」と思える人を慎重に選ぶようにしてください。

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