アダルトチルドレンの特徴として「否認」があります。
否認とは無意識に耐えがたいことから目を背ける心理的な防衛反応です。
客観的に見れば親に問題があるのは明らかなのに、親の問題から目を背けた子供は自分がおかしいと思い込む。
本当の問題と向き合わず別の問題にすり替えてきた家庭環境が否認の原点となっています。
否認によって自分の感情がわからなくなるため、異常なことも当たり前になっていて嫌だと感じない。
自覚できないところで問題を抱えた状態になっているのです。
否認によって自覚できなくなること
否認をしている人は以下のようなことが自覚できなくなっています。
- 問題がある親の言動や態度
- 親に対する怒りや悲しみ、憎しみ
- 自分の本音を抑えこむことによる嫌な気持ち
- 他人の悪意
- 他人への攻撃的、批判的な気持ち
- 頑張りすぎて疲れ果てていること
- 他人のことを考えず自己中心的になってしまうこと
- 過去の嫌な出来事を引きずっていて今でも許せていないこと
- 自分から他人を拒絶していること
- 他人の考えや価値観を受け入れずシャットアウトしていること
- 人と話したい、かかわりたい気持ちを強く持っていること
- 彼女(彼氏)が欲しい、結婚したいと思っていること
表面上は問題なさそうに見えるのですが、不安が消えなかったり、何かに依存せずいられなかったり、感情を爆発させてしまったり、どこかで支障が出てしまう。
問題から目を背けているだけで解消していないから当然ですよね。
誰しも多少は否認しているところはあって、それでバランスが取れているのもあります。
しかし、自分の感情や欲求を否認する度合いが強すぎると問題が起こるわけです。
否認を改善するために自分と向き合う
○×をつけないことが前提
自分と向き合うにはまずジャッジしないことが必要となります。○でもなく×でもなく。
○×を付けていると否認している×が見えなくなりますからね。
- 真面目に頑張るところもあるし、緊張して人と上手く話せないところもある
- ルールを守るところもあるし、完璧主義なところもある
- 物事に対して深く考えるところもあるし、集中力がなくて飽き性なところもある
- 人の目を気にするところもあるし、自己中で相手の気持ちを考えられないところもある
世間一般や親の基準でこれが正しい、これが間違ってると物事に対して○×を付けてしまう癖がありますが、自分のことには本来○×という概念がありません。
自分を基準にして自分がどうかを考えたら○も×も付けようがないですからね。
自分の中にある影を知る
影は他人に見せたくない側面のことであり、自分の嫌いな人、苦手な人、否定したくなる人、批判したくなる人に映し出されています。
- 相手の気持ちを考えない自己中な人に強い嫌悪感を抱く場合、相手の気持ちを考えない自己中な面が影として存在する
- ヒステリックな母親のようにはなりたくないと思っている場合、自分の中にある感情のままに動く面が影として存在する
- ナンパ師のような軽い男は絶対にダメだと思っている場合、自分の中にある性欲のままに動きたい面が影として存在する
ダメだと思っているから相手のことも自分の中にある要素も否定して見ないように蓋をして自覚できていないケースも多いです。
自分の中に嫌な要素があると思いたくはないですからね。
とくに親子の場合は生まれつき同じ性質を持っていることが多いので、否定すると自分の性質を否定することにもなって苦しみの度合いが深くなります。
「どういう人に違和感や嫌悪感を抱くのか」を切り口に自分と向き合ってみてください。
自分の本音を見ようとしてみる
否認で見えづらくなっていますが、日々の本音に目を向ける習慣をつければ見えやすくなります。
他人の態度に苛立つこともあるでしょう。
幸せな人を見て妬むこともあるでしょう。
嫌いな人を批判したくなることもあるでしょう。
面倒くさいからサボりたいと思うこともあるでしょう。
親切にしてもらっても鬱陶しいと感じることもあるでしょう。
自分より劣っていると思う人に優越感を感じることもあるでしょう。
自分を少しでもよく見せたいと思うこともあるでしょう。
ワガママな考えを持つこともあるでしょう。
どうしても割り切れずに親を許せない気持ちもあるでしょう。
「自分はそんな人間じゃない、そんなこと思うはずがないんだ」と否定したくなる気持ちが出てくることもあります。
それでも、「たしかにそういう面もあるな」と見ようとしていくことが否認の改善につながっていくのです。
否認していることはなかなか気付けない
否認を改善するための方法をお伝えしてきましたが、自分だけではなかなか難しいところがあります。
自分を守るため無意識におこなわれるのが否認ですから、自覚しづらいのは当然ですよね。
何か問題が表面化してやっと気付けるかどうか。
体調を崩すことが増えて「自分が頑張り過ぎてしまうこと」に気付いた以下の事例(フィクション)を読んでいただくとわかりやすいと思います。
以前から「頑張り過ぎだ」とよく言われていたのですが、まったく自覚はありませんでした。言われてもそう思えなかったのです。
私は自分が機能不全家族で育ったアダルトチルドレンだと思っています。
両親不在の家で弟や妹の面倒を見て、母親の代わりに家事もこなしていました。常に歯を食いしばって妥協せずに頑張って生きてきました。
落ち込むと寝られなくなるほどに自己嫌悪を繰り返し、感情を抑えきれず激怒することがよくあります。
リストカットをしていた時期もありました。家族に暴言を吐いて家を飛び出したこともあります。
仕事を始めたら妥協を許さないために自分で仕事を抱え込み、仕事ができない周りの人間に苛立ちながら疲労とストレスで腰痛や体調不良に見舞われることもよくありました。
それでも「もうやめた方がいいんじゃない?」と言われると「絶対にやめない!」と頑なに拒絶して続けていました。
極限まで頑張ることで自分に存在意義を見出していたのかもしれません。
このような感じで否認していることに気付くまでかなりの時間がかかります。
否認の改善にはカウンセリングが有効
カウンセリングを受けると自分と向き合うことができます。
目を背ける否認の逆をすることになるから効果が出やすいんですよね。
無意識に目を背けてきたところも、カウンセラーからの質問や対話で気付いていくことができる。
私自身もカウンセリングを受けた中で、初めて気付かされたことが多々ありました。
- 母親に対する恐怖心が強くあったこと
- 好き嫌いが激しくて自分から他人を拒絶していたこと
- 他人に対して怒りの感情を抱きやすかったこと
- 自己中心的で相手の気持ちを感じ取れていなかったこと
ただ、否認の度合いが強い人ほどカウンセリングに抵抗を感じます。
自分にとって不都合なことを知りたくないと思うのは当然ですからね。
否認を改善すれば現実が変わっていく
今まで否認してきたことと向き合うのはとてもつらいことです。
気付かないほうが良かったんじゃないかと思うこともあるかもしれません。
しかし、否認を改善することで問題が解消して、生きづらさがなくなっていきます。
渋滞に巻き込まれて飛行機に乗り遅れそうになっている場面を思い浮かべてください。
そのときに「1時間も余裕を持って出てきたのにこんなことになるなんてありえない!」とイライラしてばかりいるのが認めていない状態です。
何も解決に向かわないし、ただ疲れていくだけですよね。
認めることができれば「渋滞で遅れそうなことを前もって先方に伝えておこう」「遅れないために他の手段はないかな?」「遅れた場合のスケジュールを考えておこう」と今の自分にできる対処法が思いつく。
認めたところですでに起こった事実が変わるわけではありませんが、これからの現実を変えていくことにはなります。