人との出会いは人生を変える大きなきっかけとなります。
人は人とのかかわりの中でお互いに影響を与え合い、そして変わっていくものだからです。
人との出会いが人生にどう影響を及ぼすのか、対人恐怖症の克服につながった3つの出会いをもとにお伝えしていきます。
専門学校入学前の講習で出会った二人
「自分を変える」と宣言したはずが…
私が専門学校に入学する前の春期講習に参加したときのことです。
当時の私は、高校時代の場面緘黙症の影響からなかなか人と話すことができない状態でしたが、なんとか変えようと祖父に宣言までして自分を追い込んでいました。
しかし、現実は厳しいもので実際に人と話すような場面になると怖くて仕方なくて、やっぱり一人でじっとしていました。近くのコンビニにお昼ご飯を買いに行くことすら困難な状態でした。
私が参加した当時の専門学校の春期講習は、女子高生の参加者が多くて男子は私を含めて三人だけでした。
授業中はまだマシでしたが、休憩時間などはみんなが楽しそうに話している中で一人。
惨めな気分でした。
話しかけてくれた同級生
そんなとき、近くの席にいた男子が話しかけてくれたのです。
そして、勇気を振り絞って受け答えをしたところ、同級生だということが分かりました。
その状況を見たもう一人の男子も私に声を掛けてくれるようになって、一緒に話をする仲になりました。
私は内心「友達ができた」と本当に嬉しい気持ちになったことを覚えています。
でも、それも束の間、二人が私の異変に気付き始めました。
当時の私は劣等感の塊で、自分の見た目が非常に醜いと感じており、また話は面白くないし、かかわると迷惑を掛けてしまうと思っていましたので、仕草や行動が変になっていたのだと思います。
本性がバレたことで変わりゆく関係性
次第に、私だけがその二人から取り残されるようになり、勉強ができた私は勉強を教えて欲しいときだけ話をしてもらえるという状態になりました。
「友達になれたと思っていたのにやっぱり釣り合わないんだな…」
本当にショックで落ち込みました。
そんな私に対して、「違う世界に住んでいるから、早く俺たちがいる世界に上がって来いよ。」と言ってきたりと、明らかに上から目線でダメなヤツを良くしてやろうとする接し方に変わりました。
私に自信を付けさせようと、ワックスを持ってきて髪の毛をいじって女子に評価を聞いてくれたり、服装へのアドバイスをしてくれたり…
嬉しいような…でも、これじゃまた高校のときと同じだと思ったりと複雑な気持ちでした。
克己
そして、春期講習が終わりを迎える頃、テキストの一番後ろの見開き白紙のページ全面を使って大きな字で「克己」という文字、日付、氏名を書くようにと言われてその通りに書きました。
「克己というのは己に克つという意味や。この言葉は俺のポリシーやから、お前もこれにしたがって頑張れ!」と励ましてくれました。
そのおかげで、専門学校に入学した当初、一時的に同級生に話しかけることができ、勉強へのモチベーションも保つことができました。
正直、当時の私には「己に克つ」なんて不可能でしたし、その意味すら理解できない状態でした。
でも、「克己」という言葉をくれた人との出会いは、何物にも代えられないほどの勇気をくれたことに違いありません。
本当に感謝しています。
世の中には、良い言葉、名言は溢れています。
それらすべてが素晴らしい言葉であることは間違いありませんが、人それぞれに名言になる言葉は違います。
名言とともに出会う人。克服するために多くの人にキッカケを与えていただいたなと実感しています。
専門学校時代の同級生
相談に乗ると声を掛けてくれた
私が通っていた専門学校では、1年目に研修旅行のようなものがあって、シンガポールとマレーシアに行くことになっていました。
そして、宿泊するときに二人一部屋になるということで、いつも通り私は残りものとして、クラスで嫌われていた男子と一緒になったのです。
その人とは席が近く、よく勉強を教えていましたが仲が良いとか友達といえる関係ではありませんでした。
一緒の部屋になってもあまり話すことはなかったのですが、ふとその人が私に「何か悩みがあるんちゃうの?何でも言ってくれたらアドバイスしたるで。」と言ってきました。
当時、自分の外見の醜さを確信していて、自分に自信がなく人と話すことが困難な状態でしたから、何か良いアドバイスをくれるならと願うような気持ちで相談しました。
目のコンプレックスを解消したい
そこで、私が相談したのが、「目」についてでした。
私は一重で目が細い方で親から頻繁に「目が細い」と言われていた影響で、二重の人や目が大きい人に劣等感を感じ、また自分の目つきが悪いせいで人に嫌われているのではないかとも感じていましたので、何とか解決する方法はないかと相談しました。
すると、「アイプチとかで二重にしていく方法もあるけど、目なんか頑張ったら大きくできるで。」と言われました。
そのアドバイスをくれた人も私と同じくらい目が細かったので、あまり説得力がなかったと思うのですが、その人には彼女がいたということで「成功者」のイメージがあって信じました。
その方法はというと、とにかく常に目を大きく開く意識をして見開くクセをつけたらいいということでした。
アドバイス通りにやってみた結果
そして、そのアドバイスの通り、目を見開くクセを付けました。
専門学校時代、運送会社入社当時まで必死で続けました。
すると、その影響かは定かではありませんが、本当に目が大きくなりました。
ずっとやっていたので不自然で、運送会社入社時の合宿研修の際には同期からモノマネをされて、バカにされることもありましたが、それでも続けました。
誰もがこの方法で目が大きくなるとは思えませんが、少なからず私には効果があってそれが自信にもつながりました。
何かを信じてやり続けることが成果を生むことを教えてくれたようにも感じています。
本当に感謝しています。
外資系保険会社の先輩
今まで多くの人と出会ってきたのですが、とくに大きな影響を受けたのが外資系保険会社に勤めていた頃の先輩との出会いでした。
あまり親しい関係ではなく、逆に愛想の悪い奴と思われていたくらい。
それでも私にかかわり、そして人生を変える言葉をくださったことに感謝しています。
人とのかかわりを避け続けた日々
外資系保険会社に在籍していた当時、私はほとんど誰とも話をせずに自己流の営業手法で頑張っていました。
給料の半分が固定で半分が歩合という半分自営業のような仕組みの中で働いていたにもかかわらず、一般のサラリーマンのように定時に出社して定時に帰社するというやる気のなさ。
チーム制になっていたため、チーム内のほとんどの人が交流を持とうとしてくれたのに私だけ離れた席に一人。飲み会があっても参加せず、挨拶すらまともにできない状態で過ごしていたために100人近くがいるオフィスの中で完全に孤立していました。
主に電話で営業をかけてアポイントを取り付けて訪問するスタイルだったのですが、電話で断られたり怒られたりしているのを周りの人に聞かれるのが怖くて、離れたブースで人に聞かれないように電話をすることが多かったです。
当然、そんな状態でしたから、電話でもまともに話せることが少ないのでアポイントは取れず、行ってもなかなか契約にはつながらないという状態で苦しみました。
会社でも同僚と話をできないどころか挨拶すらまともにできないような人間が、営業で他人と話して契約を取れるなんてありえない話ですよね(笑)
でも当時の私にはそれがわからずに、とうとう成績不振で解雇されるという最悪の事態にまで進んでしまったのです…
解雇される少し前の出来事
上司から解雇を防ぐために「休日出勤をして営業を頑張ってみないか」と言われ、一度だけ土曜日に出勤したことがあったのです。
そのとき、同じチームで優秀な成績を上げている人がたまたま出勤されていて私に声をかけてくれました。
そして、私に諭すように、
「西ちゃんはいつも飲み会にも参加しないし、挨拶もしないよね。俺も挨拶してもらった記憶が無いくらいだし。難しいかもしれないけど話しやすい人とだけでいいから、付き合いしていくようにした方がいいよ。」
とアドバイスをしてくださったのです。
その話を聞いたとき、ほぼ解雇が確定していましたので、私のプライドは崩壊して精神的にもズタズタの状態でしたが心にしみるようにスッと入ってきて泣きそうになりました。
それまでは上司の話でもかたくなに聞き入れなかったのですが、「その通りだな」と初めて感じて受け入れることができたのです。
その後、解雇はされたのですが、当時の上司が転職先をあっせんしてくださって、何とか失業を免れることができました。当時の上司には今でも頭が上がらないほど感謝しています。
実際にアドバイス通りやってみた結果
転職してから先輩からいただいたアドバイスの通り、転職先の同僚や上司と一緒に飲みに行ったり、今まで連絡を取っていなかった以前の職場の同僚で話しやすかった人と連絡をとって飲みに行ったりしました。
断られるのではという不安はすごく強くて勇気を振り絞ったのですが、会ってみたら「びっくりしたけど嬉しかった」と言ってもらえて本当に嬉しかったです。
そういう行動を繰り返していく中で、人との接し方、コミュニケーションの取り方を思い出すことができ、また新たにコミュニケーション能力を向上させることもできて人とのかかわりを持つことへの恐怖が次第に薄れていきました。
そして、心理学と出会ってついに対人恐怖症を克服するに至ったのです。
あの時、休日出勤をして、なおかつ先輩が出勤をしてくれたという偶然が重なっていただけたアドバイスでしたが、あの言葉がなければ今も対人恐怖症を克服できずにいたかもしれません。
本当に感謝しています。
人との出会いに勝る良薬はない
「対人恐怖症は人とのかかわりの中でしか克服できません。」
よく他のカウンセラーさんも言われていることですが、本当にそうだと思います。
勇気を振り絞らないといけませんし、人とかかわることを続けることも最初はすごく苦痛に感じますが、それを乗り越えて対人恐怖症を克服すれば今までと違う人生を歩むことができるようになります。
自分を信じることができるようになって(自信が付いて)、周りからも評価されることでさらに揺るぎない自信にも変わってどんどん好転していきます。
私はこれらの経験から「人を信じてみること」「素直になること」の大切さを学び、本当の自分も他人も受け入れることができるようになりました。
人との出会いに勝る良薬はない。
カウンセリングはこういう出会いを逃さないためのキッカケに過ぎないのではないかとも感じています。
実際に克服されていく方も、カウンセリングによってその人の雰囲気が変わって周りから話しかけられやすくなったり、話すときに「何を話せば良いか?」「どう思われるか?」といった考えが浮かびづらくなって話すことで自然に話ができてそれが自信になったり、友達ができたり、恋人ができたり…
どんどん人とのかかわりの中で好循環を生み出して、その中で克服していきます。(この状態になった時点でカウンセリングを自然にやめていく方が多いです。)
そして、気付いたら対人恐怖症のことなんてどうでも良くなって、悩んでいたときの感覚が思い出せなくなります。
人との出会い、そしてかかわりは本当に大切ですね。