完璧主義には質の高い結果を求めて頑張ったり、事前準備をしたりという良い面もあります。
しかし、完璧である100点を求めてしまうために、80点、90点、たとえ99点でも満足できないのはしんどいものです。
完璧である必要はないし、もっといい加減な人間になれたら楽だろうなと思うのにやめられない。
完璧を求めずにいられない状態になっているんですよね。
なぜ完璧主義がやめられないのか、そしてどうすればやめられるのかをお伝えしていきます。
完璧主義とは?
「完璧」という過度に高い目標を設定し、自分に厳しい評価を下す反面、他人からの評価を求めるのが完璧主義です。
完璧主義の傾向を持つ人は完璧主義者と言われています。
モノづくり等、一人で黙々とやる仕事において優秀ですが、普段の生活や人間関係においては支障が出やすい。
自分の見た目に完璧を求めれば整形依存症となり、子育てに完璧を求めれば親子とも精神が病み、相手に完璧を求めれば関係が破綻する…
そもそも人間は完璧ではないため、完璧を求めるとおかしくなってしまうのです。
アダルトチルドレンの人に完璧主義者は多く、対人恐怖症やうつ、パニック障害、強迫神経症等との関連も見られます。
完璧主義者の特徴
- 0か100かで妥協ができない
- 全てが自分の思い通りにならないと気が済まない
- 少しのミスさえ許せない
- プライドが高い
- 失敗を恐れている
- 減点方式
- 自分に厳しく追い込む
- べき思考による義務感に縛られている
- 他人からの評価を求める
- 自分が納得するまで徹底的に頑張る
些細な間違いでもあればすべてが台無しになったような気分になる。
何でも完璧にやろうと頑張りすぎてオーバーヒート、過度なストレスや疲労が蓄積されています。
客観的に高い評価をもらえたとしても、自分ではまだまだ足りないと思うから自信にならない。
常に高みを目指し追求していく姿は向上心の塊のようにも見えます。
完璧主義なのに途中で投げ出す?
完璧主義だから何でも徹底的にやると思われがちですが、全くやらずに投げ出すこともあります。
自分が努力して完璧にできそうなことであればやる。
逆に努力しても完璧にできないと思うと全くやらない。
失敗して少しでも思い通りにならないところがあれば途中でやめてしまう。
例えば、一日のスケジュールを立てていて、途中で思い通りにならないところが出てきたら何もやらなくなるといった感じ。
完璧にできない自分が許せないから、そもそもやらないという選択になるわけです。
完璧主義の裏にある不安
完璧主義には不安が大きく影響しています。
自分自身の価値、存在意義に対する不安が強すぎるので、完璧を目指し他人からの賞賛を得てやっと自分を認められる。
つまり、完璧でない自分に価値を感じられないのです。
完璧にしないと不安が消えない、だから完璧にしようと必死に頑張る。
でも、完璧にしようと頑張れば頑張るほど空回りして、逆に苦しみや悩みを増やしてしまいます。
完璧を目指し過ぎて結局できないことも多くなりがちです。
完璧主義になる原因
親子関係
完璧主義の背景には親子関係があります。
- 親が学歴主義で100点以外は怒られた(もしくは悲しまれた)
- 親の言うことを聞く良い子のときだけ褒められた
- 親にできないところばかり指摘されてきた
- 自分が上手くできないことは親が代わりに仕上げた
一定の条件を満たさないと自分は親に受け入れてもらえない。
自活できない子供は親に見捨てられると生きていけないから必死に受け入れてもらおうとする。
だから、絶対に受け入れてもらえる完璧を求めるようになったわけです。
親の接し方や家庭環境が子供にどれだけの影響を与えるかをご説明しています。
人とのかかわりにおける失敗経験
失敗を笑われたりからかわれたりして、恥ずかしさや屈辱感を強く覚えた経験も原因となります。
また失敗して恥ずかしい思いをするのは絶対に嫌だ!もうあんな屈辱的な思いはしたくない!
思いが強ければ強いほど失敗への恐れが強まり完璧主義になる。
プライドが高く勝ち負けにこだわるのは、同じような思いをする立場に置かれることへの恐怖心が影響しています。
親子関係だけに限定されず、学校の先生やクラスメイト、先輩、習い事の先生など、他人とのかかわりで感じるケースも多いです。
カウンセラーの体験談を交えて失敗恐怖症の原因、克服方法を具体的にお伝えしています。
完璧主義が引き起こす問題
義務感に苦しむ
完璧主義者は義務感で生きています。
- 与えられた仕事はしっかり全うしないといけない
- 目上の人の話はちゃんと聞かないといけない
- 周りより能力が劣っていればその分頑張らないといけない
- 仕事だけでなく家のこともちゃんとしないといけない
- 人に迷惑をかけてはいけない
- 嘘をついてはいけない
- 他人の悪口を言ってはならない
- 一言一句メモをしっかりとらないといけない
以前の私も義務感に駆られて気が休まらない日々を過ごしていました。
高校時代に美術の制作を完璧に仕上げようとするあまり期限を過ぎてしまったり、仕事を効率化するために休憩や食事をとらなかったり、ノルマが達成できていないからと上司に止められても飛び込み営業を夜遅くまで続けたり…
当時はあまり何も感じていませんでしたが、振り返ってみるとしんどかったなと思います。
好きで始めたはずの趣味にも完璧を求め、途中から義務感になって苦しむ人も多いですね。
人間関係が上手くいかない
完璧主義者は他人にも完璧を求める傾向があります。
相手の嫌なところが一つでも見つかれば全部嫌になるし、頑張っているように見えない相手に対してものすごくイライラする。
自分が常に頑張ってしんどい思いをしているから、相手が楽していると思うと許せない気持ちになりやすいんですよね。
「あいつだけ楽しやがって」の裏には「自分も楽したいのに」という思いもあったりします。
許せないことが多いからイライラしやすく、相手にプレッシャーを与えてしまうことで人が離れていく。
完璧主義の妻が自堕落な夫を見ていて無性にイライラ。嫌がらせのように自分のルールに従わせようとすることもよくあります。
一緒にいても気が休まらずしんどいから人が離れていくんですよね。
また、過剰に頑張ってしまうことで自分を苦しめて、人と自然に接することが困難になりやすい。
相手に完璧を求めない人もいますが、心が広いのではなく相手を許せない気持ちが自覚できないほど自分を抑圧してしまっているのです。
完璧にやろうと思えてしまうところに問題がある
完璧主義者にとって一番の問題は、完璧にしようと頑張り続けてしまえるところにあります。
本来の気持ちからすれば「もう無理」となるはずが、義務感で完璧にしようと動けてしまうわけです。
完璧にしたいと思ったとしても、ある程度頑張ったらこれ以上はしんどいなと感じるときがくる。
だから、もっとやったほうがいいだろうなと思いつつ、自分の中で折り合いがつく。
しかし、完璧主義者は自分が頑張っている実感が乏しく、完璧ではないという結果だけを見ているから折り合いがつかない。
自分がどれだけ頑張ったか、どれだけしんどいかは関係なく、完璧を求めて頑張り続けることができてしまいます。
良い結果が得られたとしても反動で疲れ果ててしまったり、何かの症状が出て苦しんだり、どこかに支障が出てくるのは自分の心をないがしろにしているからです。
完璧主義をやめるために有効なこと
「完璧」について考えてみる
例えば、算数のテストで100点を取れば完璧と言えるでしょう。
しかし、世の中にあるほとんどのことは点数化できず、客観的に見て完璧だと判断できません。
掃除にしても何か物を作るにしても、完璧という基準はあくまでも主観に過ぎないのです。
自分よりもっと細かい人、能力の高い人がやれば、完璧の基準なんていくらでも変わりますからね。
ましてや人とのコミュニケーションに完璧なんてあるはずがない。
完璧とは人間の理性が生み出したものです。
犬や猫が完璧を目指さないように、私たち人間も本能では完璧を求めていません。
感情や欲求に完璧という概念が当てはまらないことからも証明されます。
「完璧」とはいったい何なのか?存在するのか?本当に自分は求めているのか?
一度立ち止まって考えてみてください。
わざと不完全な行動を取ってみる
完璧主義をやめるためには行動を変えることが有効です。
少しずつ今の考えと逆の行動をとるようにしていきましょう。
- 与えられた仕事を中途半端に終わらせる(例えば、2重チェックを1回に減らすとか)
- 目上の人の話を聞き流す
- 周りより能力が劣っているから手伝ってもらえるように依頼する
- 事情を伝えて家のことは誰かに任せる
- 人に迷惑をかける(何かしらお願いをしてみるとか)
- 他人の悪口を言う
- 愚痴を言う
- わざと沈黙の間を作る
- 要点だけメモをとるようにする
いきなり全部変えるのは不可能ですし、不安や恐怖を強く感じることはやらなくてかまいません。
まずは書き出してみてできそうなことから少しずつ取り組む。
やってみて意外と大丈夫だと実感していくことで完璧主義が和らいでいきます。
効果は高いのですが実際にやるのはかなりの勇気が必要となるため、どうしても行動に移せないという場合はご相談下さい。
完璧でない自分に価値を感じられるようになる
完璧主義がやめられないのは、完璧でない自分には価値がないと思っているからです。
完璧になって初めて価値があるのではなく、不完全な自分にも価値があると思えるようになること。
カウンセリングで押し込めてきた親への思い等、あってはならないと否定してきた本音を言葉にしていく。
自分をさらけ出していく中で、ダメなところや嫌なところがあってこそ自分だと少しずつ思えるようになります。
無理やり思い込もうとするのではなく、自分が納得できるまで対話を重ねることが必要です。
そもそも人間は不完全であるからこそ、人間らしい魅力があります。
個性とは完璧ではなく不完全にこそ存在するもの。
完璧主義で苦しむ日々から抜け出し、自分らしく生きている実感のある日々を過ごしていきましょう。