人に嫌われることが怖い、嫌われ恐怖症の人は意外と多いです。
アドラー心理学の本「嫌われる勇気」が大ヒットしたことからも証明されていますよね。
嫌われ恐怖症とは何か~原因、克服方法までお伝えしていきます。
嫌われ恐怖症とは?
嫌われ恐怖症は名前の通り、人に嫌われることを恐れる症状です。正式な病名ではありません。
「どうすれば嫌われないか」が基準なので、自分を出さず相手に合わせるコミュニケーションを取っています。
相手に合わせていれば波風立たないし、相手の機嫌が悪くなることもない。嫌われる危険性もなくなる。
しかし、人との関係を深められないから、頼れないし言いたいことも言えない。
一人で抱え込んで大変な思いをしたり、嫌われたんじゃないかと余計な考えを巡らせて苦しみます。
人とかかわるたび、相手の反応にビクビクしているのはつらいですよね。
嫌われ恐怖症チェック
- 相手に合わせてばかりで本音が言えない
- メールの文章を考え過ぎて異様に時間がかかる(返信が遅いのも気になる)
- 愚痴や他人を批判するようなことを言うのに抵抗を感じる
- 沈黙の時間ができると焦る
- 頼みごとや相談ができない
- 相手の発言の意図や態度を過剰に気にする
- 自分の方を見て話している人たちに陰口を言われているように感じる
4つ以上当てはまる場合は嫌われ恐怖症の可能性が高いと言えます。
あなたはいくつ当てはまりましたか?
嫌われるのが怖いと感じてしまうのはなぜ?
他人の評価が自分の価値だと思っているから
「嫌われること=他人から認められない(評価されない)=自分には価値がない」という方程式が根っこにあるから、嫌われることに恐怖を感じるのです。
自分の価値というのは自分の評価と他人の評価の両方で決まるもの。
だから、自分の評価がないとすれば他人の評価がすべてになってしまうわけです。
自分の評価とは自分で自分を認めること。自分自身が自分に存在価値を見出すことにあります。
日々、些細なことでも自分ができたことを認めて評価している人は、自分自身に価値を見出すことができるため、他人の評価に依存してしまうことはありません。
しかし、自分ができたことはすべて見過ごして、逆にできなかったことばかりに焦点を当てて過ごしている人は、自分自身に価値を見出せず他人の評価に依存してしまう。
結果として他人から嫌われるというダメな評価をもらわないように必死になってしまうのです。
急速な社会の変化も影響している
インターネットが普及してからは隣の席同士でもメールで会話、わからないことや悩みは家族や友人に相談せずネット検索。
自分の意見を持たなくても誰かの意見を自分のものとして言えばいい。依存的で波風立てないよう安全な方、安全な方へ流れる。
大学のグループディスカッションや会社の会議で「どう思う?」と意見を求められて困る人が増えたのは象徴的ですよね。
LINEやツイッター等、SNSの普及でコミュニケーションが多様化したことも影響しています。
電話しかなかった時代は会っているときや電話をしているとき以外はリアルタイムで他人の様子を知ることはできませんでした。
しかし、今はLINEでもツイッターでもインスタグラムでもリアルタイムで相手の様子を知り、いつでもつながることができる。
便利ではありますが人とのかかわりを切り離しづらく、他人のことが常に気になる状態に陥っています。
社会の変化に伴って他人への意識が強まり自分が空洞化、嫌われることへの恐怖心が強まってしまうのも仕方ありません。
相手からの攻撃に耐えられない打たれ弱さ
嫌われることを恐れている人は、否定や批判に対しても大きなダメージを受けやすくなっています。
「やさしそうな感じの人は大丈夫だけど、きつそうな雰囲気がある人は無理」と話す人は間違いなく打たれ弱いです。
打たれ弱い人は、相手の攻撃を恐れているがためにビクビク、オドオドして、攻撃されないように見えない壁を作って壁越しに話をしています。
文字通り「壁を感じる」と言われるタイプの人です。
相手との距離感を保って遠からず近からずをキープして、いかに相手から攻撃されないかに意識を向けています。
ですので、自分に火の粉が降りかかる可能性がある場面で喧嘩や揉め事が起こりそうになったら、なんとか調整しようと間に入るなど消火活動にまで買って出ることもあります。
また、苦手な相手や知らない人、つまり、自分の話をどう捉えるかわからない人には話したくないと思うケースも多いです。
この人ならここまで話しても大丈夫、これ以上はダメというところをある程度見極めた上でないと、否定されたり批判されたり攻撃される危険性が出てきますからね。
嫌われるのを恐れてばかりだと本当に嫌われてしまう
相手が自分を嫌っているから離れる。
相手が自分を嫌っているから自分も相手を嫌いになる。
嫌われるのが怖い人はどうしても相手中心に考えてしまいます。
相手がそっけない態度になったと感じたら「嫌われた」と思い込んで自分から離れていく。
嫌いな自分とかかわるのは嫌だろうと思って離れるわけです。
しかし、実際はたまたま何かの事情があってそっけない態度に見えただけだったり。
相手からすれば急に離れていかれて何が何だかと思うのですが、避けられているように感じるから距離を感じて近付きづらくなります。
そして、本当に関係がギクシャクしてしまう、場合によっては嫌われてしまうことにもなりかねないのです。
相手が自分を嫌っていたとしても、自分は相手が好きだから離れない。
相手が自分を嫌っていたとしても、自分は相手が好きだから好きでいる。
たとえ相手に嫌われたとしても自分が相手にどういう気持ちを持つかは自由ですよね。
相手に嫌われたかどうかより、自分が相手を好きか嫌いか、自分としてはどうしたいかに意識を向けましょう。
嫌われ恐怖症を克服するために
まず誰からも嫌われないのは不可能と知る
嫌われるのが怖い人は誰からも嫌われないように頑張っています。
しかし、実際のところ相性があるので、どれだけ嫌われないようにと頑張っても無理な人はいる。
例えば、暴力は絶対に必要だという人と暴力は何があってもダメだという人がいたとします。
偶然どちらかが相手の考えを知ったときに嫌悪感を抱くのは間違いありませんよね。
意図せず自分の考えを話しただけでも、相手が相反する考えを持っていたら嫌われてしまうことも十分あり得るのです。
例えば,人を傷つけるような言動を,気づかないうちに嫌悪者自身も自身の所属する組織や集団の成員の誰かに対して行っているかもしれない。つまり,嫌悪者は何らかの嫌悪原因によって嫌悪対象者を嫌いになっているが,その一方で,嫌悪者自身も誰かから嫌われるような言動をとっており,嫌悪者もまた誰かの嫌悪対象者となっているのかもしれない。
それなら、自分の考えを一切言わなければいいと思うかもしれませんが、自分の考えを言わないことに嫌悪感を抱く人もいます。
どうやっても一定数の人から嫌われることは防げないということです。
嫌われるのが怖い気持ちを緩和する
カウンセリングの技法の中に「認知療法」というものがあります。
簡単に説明すると自分の非現実的な考えに対して客観的に反論して捉え方(考え方)を変えていく手法です。
例えば「周りに変だと思われているはずだ。」と思っても「いや、そんなことはない。私を見てる人なんて一人もいないじゃないか。もし、変だと思われても死ぬわけじゃないし大丈夫だよ。」と自分に言い聞かせて納得させていく。
この方法は人に嫌われるのが怖い気持ちが強くない場合は効果が出ます。
ただ、人に嫌われるのが怖い気持ちが強い場合は効果が出ないので「それに、○○だから」を付け足してください。
わかりやすいようにさっきの例をそのまま使うと以下のような感じになります。
「周りに変だと思われているはずだ。」と思っても「いや、そんなことはない。私を見てる人なんて一人もいないじゃないか。もし、変だと思われても死ぬわけじゃないし大丈夫だよ。」「それに、私には誰からどんなに変だと思われても味方になってくれる親がいるから。」
最後に付け足す言葉が出てこない人はまず探すことから始めてください。
自分が否定されても味方してくれる人はいませんか?
誰かに褒めてもらったことはありませんか?
何か一つでも見つかれば心の拠り所となってあなたを助けてくれます。
嫌われ恐怖症に「嫌われてもいい」は効果なし
嫌われることが自分の存在価値と結びついている状態のまま、嫌われてもいいなんて思えるわけがありません。
大切なのは嫌われていいと言い聞かせることでも無理やり開き直ることでもなく、嫌われてもいいと思える状態にすることなのです。
たとえ相手に嫌われたとしても自分がどうするかは自分で決めることができます。
しかし、嫌われることを恐れてばかりいる人は、相手に嫌われたら自分ではどうにもできない感覚になっている。
嫌われたらどうしようもなくなるんじゃ怖くて仕方ないですよね。
カウンセリングを受けながら少しずつ本当の自分を取り戻し、他人の評価にかかわらず人生を自分でコントロールする感覚を養います。
相手に嫌われないためではなく、自分が好きだから話す、一緒にいたいからいる、楽しみを共有する。
「相手にどう思われても自分はこうしたい」という気持ちが強くなればなるほど、嫌われることが怖くなくなっていくのです。
「嫌われてもいい」と無理やり言い聞かせるのではなく、嫌われても大丈夫と思える状態をいかに作っていくかを考えるようにしてください。