対人恐怖症で悩んでいる方は克服するために本を読むということをよくされています。
解決策が見つかるかもしれないと思って本を読まれるのですが、結果として何も変わらないまま何冊も本を読み漁ることになります。
「読んだときはハッて思うんですけどそのときだけなんです」とおっしゃることが多いのです。
なぜ、本を読んでも読んだときだけで対人恐怖症を克服していくことができないのか?
その理由として
「本を読んで解決しようとしている人が求めている情報がそもそも本に載っていない。」
ということがあるのではないかと思っています。
これは本の内容が悪いと言っているわけではありません。
書店に売っている本はたいていまともな本ばかりです。
しかし、その本はたまたま本を買ったその人ひとりのために書いたものではないのです。
例えば、対人恐怖症を改善するための本であれば、症状を改善したい人全般に対して書いたものになります。視線恐怖症で10年以上悩んでて相手と目を合わせることができない状態に悩んでいるその人の症状を知った上で書いたものではありません。
当たり前の話ですが、そういうことを考え出すと本なんて書くことはできなくなってしまいます。症状なんて人それぞれ何万、何十万、何千万とありますからね。
結局は本で知った内容を自分の症状に当てはめて、「今の自分の状態はこうだからこうしたほうがいいんだな」と紐付けて考えないといけないのです。
にもかかわらず、さも買った本が自分のために書いてくれたものと勘違いしているかのごとく、紐付けないままにそのまま取り入れよう、実践しようと考えてしまいます。
結果として何も行動に移せない、もしくは効果が出ないくらいの行動しか起こせないまま、本を読んで良い内容だと思ったけど何も変わらなかったということになってしまうのです。
本を読んであることに気付いたりひらめいたりしても変わらないのは、自分に落とし込みができていないから。
落とし込みができていないがために具体的にどうすればいいかわからないまま、何も行動に変化が起こっていないことが原因だと言えます。
あと、もう一つの原因として考えられることは、「何かに気付けば克服できるんじゃないか」「何かを知りさえすれば変わるんじゃないか」という淡い期待のもとに本を読んでいるということです。
しかし、よく考えていただければ気付けると思うのですが、気合や根性、気持ちの切り替え、頭で考えてなんとかなるレベルのものならとっくに克服できているはずなんですよね。
本を読んで知識をつければつけるほどにそういう無駄なことを努力しようとしてしまうので、なにも解決にはつながりません。
残念ながら、ラクして克服できる魔法のような方法なんてないのです。
本を読んで克服したいのならちゃんと自分の今の状態、症状と紐付けをする。
対人恐怖症を克服するためには、自分にできることをコツコツと、今まで避けてやらなかったことに逃げずに向き合って少しずつやっていくしかないのです。
読む本を変えて対人恐怖症を克服していく方法
最近、私の著書を読みながらカウンセリングを受けてくださる方が増えています。
初めて書いた本であまり文章は上手くないかなと自分でも思うのですが、対人恐怖症を克服した男女3人のフィクションを小説風に書いてますので、一般のノウハウ本とは違った気付きを得ていただけるかと思っています。
ただ、本のタイトル通り、私は基本的に「対人恐怖症に本は効果がない」と考えています。
理由として、対人恐怖症で悩んでいる方には認知の歪みが起こっているからです。
極端な話ですが、対人恐怖症で悩んでいる方は、誰が見ても「青色」にしか見えない物を見て「赤色だ」と言う状態になっています。
その歪んだ見方で本を読んだとしてどれだけ本質を理解できるでしょうか?
たとえ、素晴らしい克服の秘訣が書いてあったとしても、それを克服の秘訣だと認識することができません。
結果として、表面的な気付きしか得られなかったり、間違った解釈をして効果が出ないことをやってしまうのです。
本で克服できるという淡い期待は持たないでください。
とくに本というものは、その人その人の解釈によっていくらでも意味合いが変わってくるものですから。
だからといって、本は読まない方がいいという話ではありません。
自分が読みたいと思う本は読んだほうがいいですし、いろんな本を読むことで知識や見解が広がるので読書は必要だと思います。
ただ、対人恐怖症を克服するという目的だけで本を読むのをやめて欲しいのです。
本を読むだけで気付きを得て克服できるレベルの人は、何年も悩まないですし症状にとらわれて毎日死にたいくらい悩み苦しむこともありません。というより、そもそも対人恐怖症ではありません。
対人恐怖症を克服するために必要なことは知識の吸収ではなく、認知や感覚の修正、行動による心の成長です。
本を読むのなら、
- 自分が尊敬できると思える人の本
- 読んでいて面白いと思える本
- 夢や目標を叶えるための勉強ができる本
もしくは、
- 自分が全く理解できない考え方をしている人の本
- 嫌悪感を感じるジャンルの本
- ぶっ飛んだ主人公の本(空中ブランコ、インザプールがおすすめ)
などを読んでいただく方が、対人恐怖症を克服しやすくなります。
自分が読みたい本を読むことは「自分がやりたいことをやる」という自分本位の行動になりますし、理解できない価値観や考え方に触れることは認知の修正につながるからです。
参考にしていただけると幸いです。
追伸:
ちなみに、私の本は後者の分類で書いてます。